スティーブ・ジョブズをはじめとして、イノベーターとして注目される人物たちが、習慣的に「瞑想」を行っているのにも、同じような理由があるだろう。

いまや、組織レベルでマインドフルネスと呼ばれる瞑想を採用する企業は、枚挙にいとまがないし、グーグルに至っては、これをSIY(Search Inside Yourself)という社内研修として展開している。

僕たちの仕事時間は「やるべきこと」で溢れていくからこそ、「何もしない状態=余白」をつくる方法にはそれだけの価値があるのだ。余白がなければビジョン思考が機能し得ないことを、イノベーターたちは経験的によく知っているのである。

会社にも「余白」が必要

新しい未来をつくるうえで「余白」が欠かせないのは、「個人」だけではない。「企業」や「組織」も同じだ。

以前、BIOTOPEでは、日本サッカー協会のJYD(Japan Youth Development)プログラムと呼ばれる、サッカー普及事業のビジョンづくりに関わったことがある。そこで僕たちは、有志30名と一緒に「サッカーを通じて社会価値を生み出す事業」について語り合い、それを「絵」にするビジョンデザインプロジェクトを進めた。

「もう余裕のない毎日はいやだ!」と思ったら、まず「1冊のノート」を買うべき

そこで実感したのは、日本サッカー協会の職員の一人ひとりは、サッカーを通じて社会貢献をすることに対して、ものすごく強い想いを抱いているということだ。

プロジェクト終了後には、たくさんの人から「ここまで自分個人の本当にやりたかったことを、みんなの前で話したのは初めてだった。でも、それはすごくうれしかった」「バラバラだった部署が1つになった気がした」という感想をもらった。

たいていの会社のなかには、もともと「ビジョンを描くキャンバス」が場として用意されていないことが多い。だから、新しいビジョンが生まれてこないのは、あたりまえのことだ。

しかし、ビジョンデザインプロジェクトという「キャンバス」を用意することで、それまで個人のなかに押し込められていたビジョンが具体的に出てくるし、それによってメンバーそれぞれの「妄想」も具体化する。

最終的にはそれを統合して「絵」や「物語」として発信していけば、それに共感したパートナー企業との協業も進む。