「自分モードの思考を生み出すための『スペース』」とは、まっさらなノートのような「空間的余白」だけでなく、それを埋めるための「時間的余白」をも意味している。妄想・知覚・組替・表現が成立するためには、一定の時間・空間上に広がる「キャンバス」が欠かせない。なお、これら4つのステップに固有のキャンバスは、それぞれ微妙に役割が異なっている。
[1]妄想―内省のキャンバス
[2]知覚―触発のキャンバス
[3]組替―飛躍のキャンバス
[4]表現―展示のキャンバス
『直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN』では、こうした「余白」の具体的なつくり方を解説している。いくらメソッドがあっても、それが機能するためのキャンバスがなければ、ビジョンを思考の駆動力にすることはできないからだ。
しかし、それ以前の問題は「これらの余白は、必ず本人が自らつくらねばならない」ということだ。その意味では、すべての創造は余白の創造からはじまると言っていいし、余白をつくることなくして、なんらかの創造的アイデアが生まれることはない。
子どもたちが使いこなしているビジョン思考を、大人たちが実践できない理由の大部分はここにある。子どもの生活時間には多くの余白がある。したがって、目の前にクレヨンと白い画用紙というキャンバスが用意されさえすれば、あとは勝手に彼らのビジョン思考が発動する。
他方、大人になってしまうと、少なくとも時間の「空き」はほとんどなくなる。業務や家族のための時間はもちろんだが、それ以外にも、SNSでの近況報告や写真、YouTube動画やNetFlixの連続ドラマ、メッセージアプリでの連絡などなど、ありとあらゆるものが、あなたの余白を狙って流れ込んでくる。そんな現代においては、余白が勝手に生まれることなどあり得ない。
だからこそ、「余裕ができたら、やってみよう」ではなく、まず先回りして余白をつくるのである。
僕は、言い知れぬ停滞感に苦しんでいる人から相談を受けたら、まず「いますぐ無地のノートを買うこと(空間的余白)」「いますぐノートを書く予定を入れること(時間的余白)」という2つのアドバイスをするようにしている。これも「余白づくり」に他ならない。
[1]いますぐ1冊のノートを買うこと(A6・無地のモレスキンノートがおすすめ)
[2]いますぐカレンダーに、毎朝15分、ノートを書くためだけの予定を入れること