かといって、僕は「頭のなかをビジョン思考だけでいっぱいにしろ」と言っているわけではない。この思考モードは有用性や費用対効果、問題解決などから切り離された世界であり、よほどの天才でもない限り、ずっとここだけに留まりながら生きていくのは難しいだろう。
むしろ、僕たちのような凡人に求められているのは、いつでも地下の世界(=ビジョンの領域)に降りて、自分だけの妄想からエネルギーを汲み上げ、再び地上の現実世界(=ビジネスの領域)に戻ってくるだけのスキルなのである。
一見、難しそうに思えるかもしれないが、多かれ少なかれ、子どものころには誰もがこのような「往還」の運動をやっていたはずだ。
特別な能力や技術は、何も必要ない。ただ、現代人の多くは、そうした考え方を「忘却」しているからこそ、そのためのステップをいわば人為的に設計し、意識的にそれを日々の思考に取り入れることが必要になる。より踏み込んで言えば、ビジョン思考の「習慣化」だ。
そのためのプロセスが、次の「妄想」→「知覚」→「組替」→「表現」という4ステップだ。
「余白づくり」がすべての起点になる
このような思考のモードを「習慣」として成り立たせるには、次の2つのものが必要になる。
[1]ビジョン思考の「スペース」
[2]ビジョン思考の「メソッド」
ビジョン思考を習慣化する最初の条件である「スペース」は、このたび僕が刊行させていただいた『直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN』の核心でもある。ビジョン思考を習慣化するうえで何よりも大切なのは、そのための「余白」を人為的につくることなのだ。
今回は、この「スペース」について語ってみよう。