勉強だけは時代遅れ!? 家族で“対話”を

 最新の中学受験のトレンドとして、基礎学力への回帰とともに挙げられるのが、思考力を求める問題だ。2020年以降の大学入試改革を見据え、主体的な思考力、表現力、判断力を意識した問題が多くなっている。実際にここ数年で、問題文の文字数も、記述問題も増えてきている。

 この傾向への対策について、富永氏は“対話”の重要性を強調する。

「ご飯のときも、移動中や外出先でも、家族で一緒にいるのにそれぞれが自分のスマホにくぎ付けで、目も合わさず、会話ひとつしない。そんな日常になっていませんか。共働きが増えて両親ともに忙しいため、中学受験は塾に預け、家庭学習は個別指導や家庭教師に丸投げしておけばなんとかなると思われがちですが、それだけでは絶対にうまくいきません。VAMOSが保護者に強くお願いしているのは家族での“対話”です。ニュースやワイドショーでもいいので、社会での出来事についてあれやこれやと話しあったり、トランプやボードゲームなど家族で遊ぶ”時間も大切にしてほしいのです」

 身近な出来事に「なぜ?」「どうやって?」と感じたとき、家族で対話をしながら自分なりの考えを整理し、まとめ、決めていく。あるいは家族で楽しく遊びながら、相手の次の手を読んだり、自分の勝ちパターンを頭の中に思い描いたりする。思考力や表現力、判断力や想像力は、双方向のコミュニケーションを通じて鍛えられるものであり、与えられた教材を言われたとおりにこなすだけでは絶対に身につかないーー富永氏はそう訴える。

 また、昔から『スーパーは受験の知恵の宝庫』と言われているように、ぜひお子さんと一緒に買い物にも出かけてほしいと富永氏は勧める。

「今の子どもはびっくりするほど当たり前のことを知らなかったりします。魚の切り身は見たことがあるけれど生身の魚を見たことがない子もいます。先日も授業で『法事』と『葬式』の違いについて聞いたところ、『葬式は病院で死んだ場合でしょ?』という発言がありました。核家族化が進み、『法事』に出る機会も減っているからでしょうね。

 だからなのか、最近の中学入試では『君たちは恵まれているけれど、社会にはこんな境遇に置かれている人たちがいる(いた)んだよ』というメッセージが込められた文章がよく出題されます。親を筆頭に、周囲の大人が1人の子どもに過干渉になると、どうしても子どもの視野が狭くなります。

 知識は塾で授けられますが、社会性を身につけることは家庭でしかできません。社会との横のつながりを経験させてあげることが、親の重要な役割だと思いますね」

 どんな難関校であっても、小さな時から机に向かって勉強ばかりしている子どもをほしがってはいない。むしろ、子どもらしい“体験”をたくさんしてきたか。最近は特にそんなリアルな体験値が問われているようだ。