というのも興銀は、1994年に金利スワップ取引など市場部門全体の損益とリスクのバランスを調整する新システムを導入し、これが安定的に利益を生み出してきた。平成のバブル崩壊後に生まれた不良債権処理損を補い、その結果、経営破綻を逃れる一助になったという経緯がある。

 このモデルは、02年4月に誕生したみずほ銀行に受け継がれたわけだが、ここで大きな失敗を犯している。それが、「市場部門に対する経営陣の評価が低かった」(同)ことだ。その象徴の1つとして、みずほFGは三井住友FGと違って市場部門の功労者を副頭取クラスの要職に据えてこなかった。同部門では、高度なスキルが要するにもかかわらずだ。

 長らく、みずほFGの市場部門は決算を支え続けたが、2017年以降の厳しい相場環境下ではそうもいかなくなった。結果、18年3月期決算の時点で、みずほFGは他の2メガと大きく水を開けられている。

 今回の損失一括処理においては、金融派生商品(デリバティブ)取引のリスク評価を見直すために、300億円の損失を計上する。これら一連の大幅刷新が果たして「ベストな選択」だったかどうかは、20年3月期決算に答えが出るだろう。

 最後に、これら市場部門の失敗に加え、その要因を仔細に分析したのが、週刊ダイヤモンド3月16日号の第二特集『興銀の歴史から読み解く 坂井みずほの正念場』。興銀のビジネスモデルの変遷を読み解くことで、この興銀モデルが、いかにみずほに暗い影を落としたかの経緯を紐解いている。今回、外債の含み損を一括処理したことは、市場部門の再起を図る坂井社長の覚悟の表れであるのは間違いないが、果たして“興銀のくびき”から坂井みずほは抜け出すことができるのか、航海は始まったばかりである。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 田上貴大)