松井秀喜の「核」をなす
「不動」の精神

 まずは松井氏の「ナインコード」をもう一度、明らかにしましょう。
 松井氏は1974年6月生まれの「山の八白」です。
 山の八白としての特徴、あなたは覚えていますか?
 八白といえば、はじめに思い出してほしいのが「何事にもブレない強い精神性」を持っているということです。

「動かざること山のごとし」という孫氏の名言があるように、八白を象徴するのは、何があってもその場にどしっと構えて存在感を放つ「山」です。
 見た目は柔和ですが、中身は自分の信念がしっかりとある人がとても多い傾向があります。

 ところであなたは、松井氏の著書を読んだことがありますか?
 彼の本で有名なもので『不動心』があります。
 これを初めてみたときは衝撃でしたね。

 八白の彼が「山の八白」として最も大切な資質を、そのまま本のタイトルに持ってきてしまったのですから。

 松井氏を選手としてリアルタイムで見ていたころは、私も「ナインコード」を開発する前ですし、元となる『易経』など知りもしませんでした。
 しかし、今となって彼の言動や「不動心」の本を読んでみると、まさしく松井氏は「山の八白」としての素晴らしいお手本となる人物だと心から感じざるをえません。
 松井氏は『不動心』で以下のようなことを語っています。

「『広く深い心』と『強く動じない心』--すなわち『不動心』を持った人間でありたいといつも思っています」

「チャンスに強いバッターというのは、要するに、ここぞという場面でも『平常心』を保てる選手ではないでしょうか。だから、僕は162試合同じように準備をして、すべて同じ心境で打席に入りたいと思っています。ここぞという場面で打つためにです」

「悔しさを露わにすれば、自分の心が乱れます。自分の心が乱れれば、次にど真ん中の好球が来たとしても打てません。それで得することなど、何もないのです。逆に、グッとこらえていれば、次に生きることもあります」

 この考え方は、まさに「山の八白」らしいですよね。
 八白の人間が大成するには、どんな状況でも取り乱さず、自分の大事にしている信念を貫く姿勢が必要不可欠です。
 そして、そんなたくましい姿から周囲には信頼感と安心感が生まれ、八白の人間には人徳がついていきます。

 これは、きっと松井氏も例外ではないのでしょう。
 八白としての生まれながらの気質が野球人生を通じて芽生え、彼は、知らずのうちに八白としてのお手本となったのです。
 こういった八白としての信念が若いうちから眠っていたからこそ、彼はここぞというときに「勝利を決定づける一打」を放つことができていたのでしょう。

 メジャー移籍した年には、本拠地ヤンキー・スタジアム開幕戦で打ったメジャー初本塁打が満塁ホームランとなりました。
 こういった伝説級の一打を放てるのも、彼の八白としての「不動心」が磨かれ、良い方向に動いているからこそだと確信しています。

 そういえば、あなたは、石川県の「松井秀喜ベースボールミュージアム」に、こんな言葉が掲げられているのを知っていますか?

【日本海のような広く深い心と
 白山のような強く動じない心
 僕の原点はここにあります】

 日本海はすぐにおわかりになるでしょうが、白山はご存じない方もいるかもしれません。

 白山は石川県を代表する山で、県民なら皆、親しみがある山です。
 子どもたちが絵の題材にするなど、その名を知らない県民はほぼいません。
 ここで、自分の心を「山」にたとえているところや、偶然なのか、八白の「白」という文字が「白山」に含まれているところを見ると、自分が「山の八白」なのをすでに知っていたのではないかと考えたくなるほどです。
 松井氏の八白としての高いレベルの気質には、頭が下がるばかりです。