高い技術を持った日本の中小企業が買収のターゲットに
さて、ここまでは日本からの仕事の流出の状況を見てきましたが、今度は「仕事の場は日本であっても経営者が外国人になった」という例を見ていきましょう。
今アジアの調子のいい企業は、本当に力をつけてきています。日本人と少し感覚が違うのですが、アジアの人はお金さえあれば、あっさり会社を売ったり買ったりしてしまいます。今、彼らは日本の企業を欲しています。
理由は2つあります。1つは、日本の技術力。具体的には、きらりと光る技術力を持った中小企業が狙われています。彼らは、本当の意味で日本を支えているのは中小企業だと見抜いており、その技術をとり入れて確固たる品質、革新的な商品開発力を身につけようとしています。
ここのところの円高、大企業の国際競争力の低下で日本の中小企業が弱っているのは間違いありません。また、高齢化の問題で後継者がいない等、後継問題を抱える中小企業も多いです。ここに彼らは目をつけているのです。
2つめは日本の市場に手っ取り早く参入するための買収です。特に、今まで規制で守られていてなかなか参入できなかった産業が狙われています。格好のターゲットとなっているのは、例えば病院など。医療分野は、高齢化になればなるほど市場が拡大しますし、豊かになったアジアの人々も高度医療には惜しみなくお金を使うことが予想され、アジアからの医療ツアーなどもやりたがっているのです。
また、2010年に報じられたように、マレーシアの企業がニセコのリゾート地を買収するというような動きも出てきました。このように、今絶好調のアジアの企業は日本の企業を狙っています。
そして、そうなった場合、明日からあなたの上司がアジア人になり、一緒に仕事をしなければならなくなる――という状況も、あながち絵空事ではなくなってきます。