鍵を握るのは、29日までに英下院が、メイ首相がEUと合意した円滑な離脱の前提となる「離脱協定」案を採決するかどうかだった。
だが同じ動きを見ても人によって見え方は違う。
「こんな状態では、誰も望まない『合意なき離脱』になる」と心配する人がいれば、「メイ首相は自分の案に固執しすぎだ。このままでは辞任に追い込まれる」という人がいる。
「最後は保守党も協定案でまとまる」など見方はまちまちだ。
私には「いよいよ着地体制に入った」と見える。
21日にあったEU首脳会議は「離脱期日の延長」を認めた。ここに大きな仕掛けがある。
首脳会議の合意は以下の通りだ。
◆英国の下院が29日まで来週中に、EUとメイ英首相がまとめた離脱協定を承認すれば、新たな離脱日は5月22日となる。
◆承認されなかった場合、離脱日は4月12日とする
◆4月12日までに協定が可決できなければ「合意なき離脱」
◆さもなければ、英国は「次の展開」をEUに示す必要がある
メイ首相がまとめた離脱協定とは、いわゆる「秩序ある離脱」のことで、英国がEUを完全に離脱する20年末までの間は、北アイルランド(英国領)とアイルランドの国境の自由往来や英国が関税同盟にとどまる代わりに、EUの諸規制を受け入れるというものだ。
強硬離脱派は「こんなものは離脱とはいえない」と反対に回り、2度にわたって英議会で否決した。下院は29日、離脱協定の一部について3度目の採決をしたが、否決し、結局、3月中に離脱協定が承認されることはなくなった。
メイ首相は協定案採決を条件に辞任する意向を表明する「賭け」に出たが、結局、空回りに終わった。
これで、5月22日までの期限延長はなくなった。英国は4月12日までに態度を決めなければならない。
決めなければ「合意なき離脱」となるが、これがもたらす大混乱は語り尽くされている。一言でいえば「英国自滅、EU失速」。だから賛成する声はほとんどない。