デモには野党・労働党のワトソン副党首やスコットランド自治政府のスタージョン首相、ロンドンのカーン市長らが参加した。

「前回は、『EUから出れば多額の予算を国民保健サービスに回せる』などのウソを信じて投票した人が多かった。事実を知った上で、人々の意思を示す機会が必要だ」

「国民投票の時はまだ選挙権がなかったけど、自分たちの将来に影響することです。意見を言う機会がないのはフェアじゃない」

 BBC放送は、こうした参加者の意見を伝えた。

 これまでの報道は、メイ首相が提示した「離脱案」の可否を巡る議会混乱ばかりに焦点が当たり、「協定案支持か」「合意協定なき離脱か」の2項対立で捉えられがちだ。

 だが「EU残留」という第3の選択が注目されるようになった。

 ハモンド財務相までこう語っている。

「メイ首相の離脱案は議会で過半数を取れないだろう。首相の離脱案を支持しないなら議会は何を支持するのか決めなければならない。議会の過半数が2回目の国民投票を支持するか分からないが、筋の通った提案であり、検討に値する」

 閣内からこうした発言が出るのは大変だ。「本命」が姿を現した、と私は感じている。

キャメロン首相の「火遊び」が
予想外の「離脱」に

 国民投票で「EU離脱」が決まった時、外交官・ビジネスマン・ジャーナストのほとんどは「愚かな決定」と見ていた。

「キャメロンの火遊びで大変なことになった」と若い首相の未熟な行動を嘆く声が多く、「離脱してよかった」という意見はほとんどなかった。

「決まったからには仕方ない。国民投票で決めたことは国民投票で修正するしかないだろう」という政府関係者の意見が印象に残っている。

 キャメロン氏の「火遊び」とは、ポピュリズムにこびたことだ。

 英国はEUに加盟しながらも、独仏主導の運営から距離を置き、ユーロに加わらないなど自主性を大事にする政策を取ってきた。キャメロン首相は、国内の反EU感情をバックにEUと交渉し、有利な条件を引き出す手法を取っていた。

 競争原理と自己責任の新自由主義路線を進めたキャメロン政権は、国内では緊縮財政。行政サービスに大ナタを振い、湧き上がる不満を東欧からの移民や頭の固いブリュッセルのEU官僚に責任を転嫁することで英国民の目をそらせてきた。

 国民投票は政権への不満をEUに向ける「ガス抜き」でもあったのだ。