脅迫にも似た強気の姿勢

 ところが、トラブルを抱えたある大学からのクレームに対して、PI社は責任を回避。その顧客は、あろうことか日本レーザーの親会社である日本電子の支店に、「こちらが要求する仕様になっていない」と苦情を持ち込んだのです。

 本来はPI社が対応すべきですが、大学の担当者は、

「日本レーザーから購入したドイツ製品がトラブルになっている。
 すみやかに問題を解決してほしい。
 それができないなら、日本電子の社長に直接抗議する

 と、脅迫にも似た強気の姿勢を見せたのです。
 こうした問題で親会社を困らせれば、その子会社の社長は解任されるのが通例です。

 その弱みにつけ込んだ理不尽な要求には泣き寝入りするしかなく、最終的には「P社に1000万円もする新しい装置を注文・納入し、大学に納入し直す」ことになりました。

 本来はメーカーの負担ですが、親会社を脅迫したありえないやり方に、許せない気持ちでいっぱいでした。

 その半年後、ドイツ・ミュンヘンのレーザー展示会に参加したとき、P社のSB副社長から、「日本レーザーを切ってPI社に移管した背景」について聞くことができました。

 移管の背景には、驚くべき「策略」が隠されていました。

 元筆頭常務は、私と日本レーザーを貶めるために、P社のS社長に、次のようなを並べていたのです。

「日本電子が近藤を送り込んだのは、日本電子が自社開発を進めるための布石だ。
 日本電子は、日本レーザーにP社の製品情報を集めさせ、その情報を使って、P社の製品と同じレーザーを使った計測装置をつくるつもりだ。
 彼らにはそれだけの技術力がある。
 日本レーザーも、日本電子も、あなた方のライバルになろうとしている。
 この際、日本レーザーを切って日本法人を立ち上げたらどうか。その会社の社長に、ぜひとも私を登用してほしい」

 P社は、元筆頭常務の偽りを信じ、日本レーザーとの契約解除に踏み切りました。