前原代表の乾坤一擲の仕掛けは、小池知事の当時の国民的人気の高まりもあり、一時は安倍政権の倒閣を実現するかと思われた。だが、それを防ごうとしたのは、自民党・公明党の連立与党のみならず、共産党でもあった。

 共産党は、希望の党を猛批判し、希望の党の公認候補が出る選挙区に、候補者を立てると宣言した。そして、希望の党に合流しない民進党の候補者に対しては、従来のような共闘関係を呼び掛けた。その結果、左派の立憲民主党が誕生し、希望の党は急失速した。

 このように、時系列的に追っていくと、自民党と共産党は、直接的な対話はありえないものに、実は利害が一致していたことがわかる。その利害の一致とは、政権交代可能な「中道政党」を潰して、「自民党長期政権と万年野党」の政治を築くことだ。

2017年11月総選挙の真の対立構図は
分極的一党優位制vs穏健な保守中道二大政党制

 この連載ではかつて、2017年11月の総選挙を以下のように総括した(第165回・P.5)。政治学の理論をアレンジして用いれば、「穏健な保守中道二大政党制」と「分極的一党優位制」のどちらを選ぶか、という争いだったといえる。

「穏健な保守中道二大政党制」とは、安全保障を政争の具とせず、経済財政・社会保障政策など内政面では、「改革が手ぬるい」「よりよき政策がある」と、保守と中道が競い合って、現実的な政策を作り上げていく体制だ。

 この体制では、現実的な政策の細部を競い合うことになるので、政治家は政策を勉強しなければならなくなるし、国民も政策を理解しようとするようになる。 中身の滅茶苦茶な「やりたい政策」を強引に通すようなことは通用しなくなる。2017年11月に小池知事・前原代表が仕掛けたことは、まさに「安全保障を政争の具にしない政治」であり、「より改革的な政策とは何かを競い合う政治」を実現しようとするものであった。

 そして、その実現を必死に止めたのが、自民党のみならず、共産党だったといえる。安倍政権の登場以来、次第に確立してきた「分極的一党優位制」に強引に引き戻したのである。

「分極的一党優位制」とは、保守に大きく寄った自民党に対して、左翼に大きく寄った小規模な野党が、「なんでも反対」の金切り声を上げる体制である。なんでも反対の野党に無党派(中流層=消極的保守支持者)の支持は集まらず、自民党が圧倒的多数を築き、政策を無修正で通していくのだ。