また、「大阪都構想」という、「シングルイシュー(単一争点)」の選挙となったことだ。特に、政策的に全く相いれない自公と共産が、「都構想」反対だけで共闘して、選挙に勝ったらなにをしたいのかわからなかった。結局、維新も反維新も、府政・市政そっちのけで「権力闘争」をやっているだけのように見えてしまった。

 松井新市長と吉村新府知事は、「都構想への再挑戦へ踏み出す」と宣言した。「(府と市が)バラバラにならないようにする仕組みを作るのが都構想」というが、その理解が国民に広がったかは疑問だ。むしろ、「クロス選挙」の強引な手法が強調されてしまい、都構想は「大衆迎合」だというイメージが拡大したのではないかと懸念する。

2017年11月総選挙の真の勝者は
「自民党と共産党」だった

 しかし、「維新vs反維新」の対立構図が、単なる「権力闘争」「大衆迎合」とみなされるのは残念だ。実は、現代日本政治の本当の対立構図になりえるものだと思うからだ。

 この対立構図は、2017年11月の衆院選の「隠れた対立構図」と同じだったのではないかと考える。あの選挙で、安倍晋三首相は国政選挙5連勝を達成した。自民党で単独過半数獲得、自民党・公明党の連立与党で3分の2の議席数に達し、改憲の国民投票発議が発議となる議席数を圧倒的に超えた。

 一方、野党側では、民進党が希望の党、立件民主党、無所属に3分裂した。前原誠司民進党代表(当時)が党を事実上解党し、いったんは丸ごと合流しようとした、小池百合子東京都知事が代表の希望の党は、「憲法」「安全保障」の基本政策で候補者に「踏み絵」を踏ませて反発され、急失速した。

 これに対して、民進党から左派の議員が集結した立憲民主党は、予想以上の支持を集め、野党第一党となった。だが、共産党・社民党を加えた「護憲・安保法制反対」の左派全体としてはわずか67議席となった。選挙前には114議席(民進党88、共産党22、社民党2、自由党2)だったことを考えれば、左派は惨敗を喫したといえただろう(本連載第169回)。

 この選挙の勝者は、いうまでもなく自民党と公明党の連立与党、敗者は野党であった。だが、見方を変えてみると、違った勝者と敗者の構図が隠れていることがわかる。この選挙の勝者は、実は自民党と共産党であり、敗者は旧民進党と希望の党、維新の会だったのではないだろうか。

 元々、前原民進党代表が希望の党への合流を決めたのは、民主党政権崩壊後に進められてきた共産党と民進党の「野党共闘」への不満が原因だった(第168回)。共産党と組むことで、安全保障、憲法、消費税などの基本政策で現実的な議論ができなくなった。それだけではなく、共産党の影響が、党の選挙運動や運営にまで及んできていた。前原代表はこの状況が我慢ならず、政策的に近い小池知事率いる希望の党への合流を仕掛けた(第165回)。