それに対して、維新の会が「大阪を改革する」と主張して、いろいろやってきたのはフェアに評価すべきであろう。橋下元知事・市長時代からの「二重行政の解消」「既得権の解体」「財政再建」の取り組みによって、新たな財源を生み出し、新たな政策を始めている。

 例えば大阪府・市では「公立高校無償化」に加え、「私立高校の無償化」(府内全域)「中学塾代助成制度」(大阪市)「段階的幼児教育無償化」(大阪市、守口市、門真市など)「中学3年までの医療費無料化」「授業用タブレット端末導入と教室のクーラー設置」「教員の初任給大幅引き上げ」「日本初の市立中高一貫校開設」(大阪市)など教育政策を推進している。

 特筆すべきは、大阪市の「異次元の保育所整備で、待機児童数を過去最低の37人にした」(吉村市長)という認可保育所の大幅増設による保育所入所枠9000人増だろう(吉村大阪市長定例記者会見2018.5.10)。これは、待機児童問題解決よりも「幼児教育無償化」を優先させている安倍政権よりも、より大胆な政策を打ち出し、実行しているといえるのではないか。

 また、「日本初の公営地下鉄を民営化」「水道料金値下げ」「特別養護老人ホームに入居できない待機高齢者ゼロ」「独り暮らしや寝たきりの高齢者見守り事業」など、住民の生活や高齢化社会に対応する政策も実行した。

 さらに、府・市の枠を取り払った大阪観光局が推進する観光政策による、観光業の急拡大や、医薬品産業を大阪のメイン産業の1つと位置付けた成長戦略、統合リゾート(IR)の誘致、2025年の大阪万博の開催決定など、国ではなかなか進まない成長戦略にも積極的だ。

 これらの大阪維新の会の政策の打ち出し方は、保革のイデオロギー対立にこだわり、「なんでも反対」し、「なにも変えてはいけない」と主張し、審議拒否を繰り返した結果、安倍政権が国会提出した問題だらけの法案を無修正で通してしまう、国会の「左派野党」のあり方とはまったく異なるものである(第189回)。

 私は、大阪維新の会の姿勢こそ、「穏健な保守中道二大政党制」における、中道陣営のあり方であると考える。安全保障を政争の具とせず、経済財政・社会保障政策など内政面では、「改革が手ぬるい」「よりよき政策がある」と、保守と中道が競い合って、現実的な政策を作り上げていく体制を築く、野党のあり方である。

大阪維新の会の取り組みを
国政レベルの野党の成長にどうつなげるか

「日本維新の会」の代表も兼ねる松井新市長は、常々「大阪で実行してきた改革を国政に」と訴えてきたが、うまくいかなかった。シンプルに、地方自治と国政は違うといえるわけだが、私は「大阪都構想」が「しょぼい構想」に過ぎないということも大きいと思う(上久保誠人『橋下徹の「しょぼい提案」をスケールの大きな提案に変える秘策がある』)。