ノートに書き出すことの3つの効能

 記憶力がずば抜けて良い天才、あるいは頭の回転がものすごく早い天才にとっては、ノートに何かを書くことは必要ないのかもしれない。

 ただ世の中の多くの人は、私も含めて天才ではない凡人だ。凡人たる私たちは、決して忘れないであろうと思っていたものを実にあっさり忘れるし、一つの考え事で頭がいっぱいになると、もう一つの何かを考えることはできなくなる。

 時には頭が考えることを拒否するだけでなく、耳は周りの音をすべて遮断し、聞くことすら放棄する(例えば奥さんの話とか)。

 私は、大切なことを書き出すことの効能は三つあると考える。

 一つ目は、当然のことだがノートに書いた文字や絵は、自分が消さない限りは半永久的に残り続けるということだ。

 自分が忘れてしまっていても、ノートが代わりに記憶してくれている。私自身すっかり忘れていたタスクや買い物リストも、ノートが思い出させてくれることを何度も経験している(それだけ忘れているということだが)。

 二つ目は、書き出すことで忘れても良いという安心感が得られることだ。凡人たる私は、些細なことでも「あとでアレやらなきゃ……」と思いたった瞬間から、もうそのことで頭がいっぱいになる。

 目の前の仕事は手につかなくなり、会議中には地蔵と化す。ノートが手元にあれば、とにかく「あとでやること・あとで考えること」としてメモしておくことで、今その瞬間はそのことを綺麗さっぱりと忘れることができる。ノートがあとで教えてくれる安心感に代わるものはない。

最強ノート術バレットジャーナルは<br />自分らしく生きるためのツール

 三つ目は、やるべきことや考えるべきことに、冷静に向き合えるということだ。私はその日のやることリストを一か所に書くように心がけている。これはバレットジャーナルでいう「デイリーログ」の考えとほぼ同じだ。

「アレやらないと!」と思った瞬間に、その日のやることリストに追加するのだが、その場所には他にも「やることリスト」が並んでいて、実行されることを待っている。

 ここで冷静になって他のリストとどちらが大事なのか? どちらが緊急なのか? そもそも今日やらなければいけないのか? 永遠にやらなくてもいいのではないか? と冷静になって向き合うことができるのである。

「大変だ!」と思ったことも「実は大変ではなかった」とか、あるいは「もっと大変なことがあった! こっちを先にやらないと!」と気がついて軌道修正することができるのである。

 いずれの場合も常に持ち歩くノートを1冊用意し、そこに書くことをルールにしておく方が良い。よくある失敗事例は、手元にある適当な付箋や使っていない手帳のページに書いてしまい、あとからどこに書いたのかわからなくなることだ。これでは書くことの効能は得られない。書く場所だけは一か所に決めておくことを強くお勧めする。

 なお、余談だが、スマートフォンにメモをするということにも挑戦したことがある。予定時刻になったら教えてくれるし、タスクの先延ばしや移動も簡単で初めは良かったが、いずれ私にとっては機能しなくなった。

 タスクひとつをメモするのに時間がかかったり、会議中にスマートフォンに触れない場合があったからだ。そして、リマインド機能で通知をしてくれることに甘えて、自らアプリを開いて確認するという作業をしなかった。

 今思えばいつも手元にあるスマートフォンであったとしても、顔認証してロックを外し、対象のアプリを立ち上げることが、自分にとっては億劫な作業になっていたように思う。

 これは私の性分によるものかもしれないが、思い立った時にパッと開いて確認するのは、まだアナログの方が優秀な気がする。もちろん紙のノートに書く時に、Wi-Fiもバッテリーも気にするは必要ない。

カラフルである必要はない
どこまでも、自分らしく生きるためのツール

 最後にバレットジャーナルに関する誤解を解いておこう。バレットジャーナルは、「カラフルなペンやイラスト、またカリグラフィーを用いて可愛くおしゃれに作るもの」だけではないということだ。

 インスタグラムやピンタレストで「#bujo」をはじめとしたバレットジャーナルに関するハッシュタグを検索すると、とてもおしゃれなバレットジャーナルがたくさん出てくる。出てきてしまう。

 これを見て「なんだ自分には縁がないものだ」とは思わないでほしい。もちろんノートを装飾することで気分が上がったり、何度もそのページを見返すモチベーションになる人にとっては大切な作業なので否定はしない。ただ、それだけがバレットジャーナルの魅力だと、誤って伝わっているような気がしてならない。

 繰り返しになり恐縮だが、バレットジャーナルは「頭の中のモヤモヤやゴチャゴチャを書き出して整理し、大事なことに集中し、そして自分らしく生きるためのツール」だ。

 ノートの中身が綺麗か、あるいは整っているかは実はどうでも良いと私は思っている(実際に私のノートは人に見せられるほど整ってはいない)。

「汚くても、字やイラストが下手でも問題ない」と、一旦ハードルを下げたうえで、バレットジャーナルにチャレンジしてほしい。

 数ヵ月続けてみて、理想の生活ができているかどうか、自分らしく生活できているかどうかが大事な評価ポイントだ。

 ぜひ『バレットジャーナル 人生を変えるノート術』を読んで、お気に入りのノートとペンを用意していただきたい。ライダー・キャロル氏の言葉を借りるなら、「ありのままの自分を受け入れてくれる最良の友人」であるバレットジャーナルと楽しく付き合っていってほしい。