「業績のいい会社、悪い会社は決算書のどの数字を見ればいいのか」と悩んでいないだろうか。『数字で読みとく会社の未来』の著書がある税理士の池田陽介氏が、今話題のカルロス・ゴーン氏と日産自動車のケースを例に、決算数字の“見どころ”を検証する。
ゴーン氏が日産を引き受けた当時
日産の負債額はどれぐらいだったか?
仏・自動車メーカーのルノーから送り込まれたゴーン氏が、日産自動車を率いるようになったのは1999年6月だ。経営危機に直面していた日産が、ルノーからの資金5857億円を受け入れたためである。当時の日産は、高コスト体質と過大な借金(有利子負債)という経営課題を抱えていた。
ゴーン氏は「リバイバルプラン」(再建計画)を掲げ、日産の経営改革に着手。最初に迎えた2000年3月期決算は、売上高5兆9770億円に対して、本業による利益を示す営業利益は825億円(売上高営業利益率1.4%)にすぎなかった。
それどころか最終的な損益である当期損益は、6843億円の巨額赤字だった。
トヨタ自動車に比べ、6.9兆円も下回る売上高。それでいて返済義務を負う有利子負債の差はわずか。トヨタ4兆3677億円に対して日産は約3兆6000億円。ゴーン日産は最悪の状況からのスタートだった、といっていいだろう。
翌2001年3月期決算は、まさしくV字回復。当期純利益3310億円は、日産における最高記録。従業員の年金に備える積立金の不足を表面化させるなどそれまでの会計を改め、前期に一挙にウミを出し切た効果である。見事な“演出”だった。
どん底決算から一転、最高益を計上した最大の要因は、販管費(販売及び一般管理費)の削減だ。「販売諸費」や「給料手当」だけでも1000億円以上の減額。ゴーン氏が“コストカッター”といわれる所以だ。