米中摩擦激化は輸出回復遅らせ、景気後退招く公算大きい

 消費税率引き上げの再々延期にからめて、24日の政府の月例経済報告での景気判断が注目されているが、GDPが予測を上回るプラスになったこともあり、生産や輸出の弱さに対する表現が強められることはあっても「緩やかに回復している」という文言は残されるだろう。景気が後退していることを示唆する判断にならないと予想される。となれば、消費税の再々延期はまずないといってよい。

 もし月例経済報告で後退を示唆するような判断が示されたとすれば、それは消費税率引き上げの再々延期につながるものとなるだろう。

 19年後半にかけては、「これまでの通りの周期であれば、グローバルなITサイクルが底を打つ」(斎藤太郎・ニッセイ基礎研究所経済研究部経済調査室長)とみられ、輸出は回復に向かいそうだ。そうなれば、生産も上向き景気後退は避けられるだろう。19年度の経済成長率は18年度にくらべほぼ横ばいのゼロ%台半ばとなる見通しだ。

 ただ、足元で景気は後退してはいないとしても、先行き後退に陥るリスクは残っている。その主因は、米中相互のさらなる関税引き上げなど米中摩擦の激化だ。米国がスマートフォンなどIT関連製品の消費財を含む中国からの輸入品全てに対する関税引き上げを実施すれば、中国の対米輸出が減少し、ITサイクルの底打ちは遅れ、日本の輸出回復も遅れることになる。

 幼稚園や保育園の無償化、キャッシュレス決済のポイント還元など対策は講じられるが、消費税率引き上げは年間で2.5兆円前後の家計負担増をもたらし、個人消費を減少させる方向に働く。消費税増税までに輸出が回復しなければ「19年度後半の日本経済は内外需ともに悪化する恐れがある」(斎藤氏)、つまり景気後退に陥る公算が大きくなるだろう。