未来志向の肯定的な最適解を見つけ出す

 実社会では、数学の試験問題のように、正解を1つに絞れないケースが多い。
 そこで正解を見つけ出すのに役立つのも、哲学の学びを通じて磨かれた考える力である。

 ある商品が売れないというマーケティング上の課題に直面し、「その理由は何かを考えろ」と上司から指示を受けたとしよう。
 そこでなぜ売れないかという理由を考えるだけでは足りない。
 聞かれたことには答えているから、学校の宿題なら及第点がもらえる。
 しかし、ビジネスの世界では、聞かれたことに答えるだけでは落第なのだ。

 なぜ売れないのかという問題の核心を見極め、それを踏まえてどうすれば売れるようになるかの最適解を導き出し、上司に斬新な提案ができて初めて正解といえる。
 売れない理由を導き出すだけなら、コンピュータで過去のマーケティングのケーススタディをたくさん集めれば済む。
 それはAIが何よりも得意とする分野だ。

 AIとコンピュータは過去を振り返って「~してはいけない」という否定的な答えを導き出すのは得意だが、これから先に「~すればいい」という未来志向で肯定的な答えを出すのは不得意である。
 未来志向で肯定的な答えを導き出すのは、世の中に存在していなかった最適解を見つけるクリエイティブな作業である。
 誰も考えなかったことを考えなくてはならない。

 しかも「~すればいい」という正解は、1つに絞れないのが普通である。
 そこで活きてくるのが、哲学を通して学んだ考える力であり、洞察力なのである。

 AIとコンピュータが集約した過去のケーススタディでピラミッドの土台を作り、その天辺に人間が洞察した正解をのせる。
 現在、AIと人間は、そういうスタイルで協業している。
 この先AIが進歩すれば、土台作りから天辺に正解をのせるところまで、すべてをこなす時代がやってくる。
 少なくともそれまでは、哲学を学んだビジネスパーソンとAIの協業がベストマッチングなのである。