ファーウェイもサムスン同様に、ハイエンド機種からガンダムでいうところのザク、ジムのような「量産型」製品まで幅広く手がけるスマホメーカーであるため、同社の強みである量産型製品で規模の経済による強みが発揮しにくくなる。
これは、ファーウェイにとって大きな痛手となるかもしれない。すでに日本でも、大手携帯電話キャリアだけでなく、MVNO事業者やアマゾンまで、ファーウェイ製品の取り扱いを止めたり、延期したりしている。
ただし、ファーウェイがこのままスマホ事業を縮小していくとも考えられない。最悪のケースとしては、これまで日本や欧米から供給を受けていた部品や技術を中国で内製してしまうことで、生き残りを図ることだ。自由主義経済で活動する民間企業であれば、いくらファーウェイほどの大企業で、技術の蓄積があっても、今回のアメリカ発の制裁に耐え切れないかもしれない。しかし、相手は中国企業であり、ファーウェイは軍事技術とも密接な5Gをはじめとする通信技術を開発する企業だ。
中国政府がとことんバックアップし、アメリカの手が届かない中国国内の13億人の市場を見据えたビジネスで、完全自社生産スマホを大量に販売すれば、最終的に国際市場で強力な製品力を有することになるかもしれない。制約や規制はイノベーションを誘発する起爆剤でもある。かつて中国が日本に対してレアメタルの輸出を規制したときに、日本企業は使用するレアメタルを削減する技術を開発して対抗し、結果として中国のレアメタル事業のほうが打撃を受ける結果となった。同じことが逆の立場で起きないとも限らない。
ファーウェイに代わって
トップへ踊り出られるか
では、どうすべきなのか。本当は、今のタイミングは自由主義国のエレクトロニクスメーカーにとって絶好のチャンスの時であるはずだ。サムスン、ファーウェイ、アップルの「スマホビッグ3」のうち、ファーウェイが脱落する可能性があるならば、そこに入り込める企業が出てくるはずだ。
スマホ市場が数社の寡占状態になったとしても、1社独占になることは考えにくい。携帯電話を販売するのは携帯電話メーカーではなく、携帯キャリアであり、携帯キャリアと携帯電話メーカーとの間にはバーゲニングパワーをめぐるせめぎ合いがある。アップルがiPhoneの部品をできる限り複数社から購入しようとするのと同じである。