ハイエンドしか出していないように見えるアップルも、実は地域戦略として、過去のモデルを事実上のミドル・ローエンドモデルとして投入しており、トップエンドではない量産型モデルで収益を得ている。日本でも、格安スマホキャリアがiPhoneの古いモデルのみを扱っていることからも、その状況は理解できるかもしれない。

量産に長けたファーウェイは
この苦境を切り抜けられるか

 量産に長け、他社よりも高性能な量産型モデルのスマートフォンを市場に供給し、アップルを抜いて史上2位の地位を得たのが、今話題のファーウェイ(華為)である。

 ファーウェイといえば、情報漏洩の危険性が指摘され、同社の携帯基地局機器の排除がアメリカや日本で話題となったが、基地局事業と携帯端末事業とは別のものと考えられ、端末事業には大きな影響が及ばないと見られていた。しかし、ここにきて大きく状況が変わった。ファーウェイのスマートフォンはグーグルのAndroid OSをベースとしており、開発にはグーグルの技術が必要だが、グーグルがファーウェイへの技術供与をやめる方向だと報じられたのだ。

 日本の部品メーカーも、数社がファーウェイへの部品供与をやめるという報道が出た。これだけなら、もしかするとファーウェイも乗り越えられる苦境かもしれない。グーグルのAndroidの技術には無償公開のものもあり、そうしたフリーに使える技術をベースにAndroidと互換性のあるファーウェイ・オリジナルOSを開発できるかもしれないからだ。

 インテルやクアルコムによるプロセッサーの供与停止も、ファーウェイが準備を進めている自社開発の部品に置き換えていくことで乗り切れるかもしれない。

 しかし、プロセッサー技術のベースを提供する半導体開発大手・アームが取引を停止するという情報が流れると、ファーウェイのプロセッサーの自社開発にも暗雲が立ちこめてきた。アームは2017年にソフトバンクグループが買収したことでも有名になった英国の半導体企業だ。スマホ向けのプロセッサのCPUコアの開発では世界で90%以上のシェアを持つとも言われる、スマホ開発の趨勢を握る企業である。

 各社が様々なIT機器や家電製品に組み込んでいる独自のプロセッサーと呼ばれるものの多くは、ゼロベースで開発しているのではなく、共通のプラットフォームをベースに、各社独自の要素を追加開発しているケースが多い。アームが開発するCPUコアも、スマホメーカー各社の独自プロセッサと呼ばれているものの文字通りコアになるプラットフォームであり、ファーウェイがプロセッサを独自開発するにしてもアームの協力は欠かせない。

 アームはそうした半導体チップのベースを開発している企業であり、これまでもファーウェイに技術を提供してきた。スマートフォンの中核をなすプロセッサーの開発をアームのプラットフォームなしにファーウェイが独自に開発するのは、かなり困難な話だ。