離乳食と食物アレルギーPhoto:PIXTA

 今年3月、「授乳・離乳支援ガイド」(厚生労働省、以下ガイド)が12年ぶりに改訂された。食物アレルギーに関する最新研究を反映し、離乳食に関する項目に手が加えられている。

 従来、日本では卵など「アレルゲン」になる食物の摂取を厳しく制限し、離乳早期には食べさせないよう指導されてきた。

 しかし最新の研究では、食物アレルギーは「皮膚バリア」機能が未熟なことによる皮膚の炎症、つまり湿疹やかき壊した皮膚からアレルゲンが入ることが主原因であることが判明している。口からアレルゲンを取り入れることは、むしろ免疫機能を育てる方へ働く。

 2016年に報告された国立成育医療研究センターの研究では、生後4、5カ月時点でアトピー性皮膚炎と診断された乳児147人を、生後6カ月から固ゆで卵粉末を含むカボチャ粉末を毎日食べさせる「卵群」と、カボチャ粉末のみの「カボチャ群」に分け、生後12カ月時点での卵アレルギー発症率を比較。

 卵群の摂取量は1日固ゆで卵0.2グラム相当から開始し、生後9カ月以降は同1.1グラム相当分とした。また全例に積極的なアトピー性皮膚炎の治療を行っている。

 その結果、カボチャ群の卵アレルギー発症率は38%だったのに対し、卵群は9%と8割も発症を抑えることが判明している。

 この結果を受けて、本ガイドでも「生後5~6カ月から離乳を始めるよう情報を提供する」とともに、離乳初期から「卵黄など」を試してみると明記された。

 ただし、ガイドの記載はあくまでも目安だ。特に皮膚疾患がある場合は、医師や保健師と相談しながら、子どもの成長、生育環境によって調整するといい。

 食べさせるときは固ゆで卵を米粒大のみじん切りにして(冷凍保存可)、1~5切れから試し、徐々に増やしてみよう。うまくいったら、生後7~8カ月ごろから卵黄1個分、あるいは全卵3分の1程度へ増やすといい。

 育児の世界も日々進化している。古い知識を振りかざす夫、あるいは煩わしい祖父母にならないようアップデートを怠りなく。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)

訂正 記事初出時、第9段落で『固ゆで卵の「白身」を米粒大のみじん切りにして』とありましたが、現在の形『固ゆで卵を米粒大のみじん切りにして』に修正させていただきました。(2019年6月25日 14:30)