経常収支でトランプ大統領説得も失敗か

 3つ目に、貿易赤字にこだわるトランプ大統領を日本が中心となって“説得”できるか、という意味で「経常収支不均衡」の議論の行方も注目点の一つだった。

 トランプ大統領は世界一の大きさである米国の貿易赤字を問題視し、以前から二国間交渉を通じた赤字削減にこだわってきた。ただ、米国の輸入が多いのはトランプ大統領自身が打ち出した減税策で国内消費が強いからともいえるし、米国が輸入品に高関税を課しても、低関税の他国から輸入品が増えると、赤字が減るかは分からない。

 そこで、モノ以外の投資・配当金なども含む総合的なお金の流れを示す経常収支に目を向けてもらい、トランプ大統領に多国間交渉の重要性を分からせたいとの狙いがあるとみられていた。

 6月上旬のG20財務相・中央銀行総裁会議では「経常収支不均衡」を主要議題の一つとし、共同声明に「経常収支の全ての構成要素に着目する必要があることに留意する」との文言を明記した。

 最終的にG20サミットの首脳宣言でも同じ文言を引き継ぐことに成功したのだが、肝心のトランプ大統領は29日のサミット閉幕後の記者会見でWTO(世界貿易機関)について触れた際、「米国はWTO加盟で(貿易赤字が)膨らんだ」と話すなど、貿易赤字に執着する姿勢は相変わらずだった。