情報・通信の世界で、世の中のシステムを変えてしまう破壊力を持つ“大構想”が進行している。今年4月から総務省の審議会で、本格的な議論が始まる「情報通信法」だ。デジタル化によるIP通信の世界では、どのようなことが起こるのか。地殻変動を前に、誰も無縁ではいられない。

 昨年12月、NTTコミュニケーションズが率いる特命チームは、業界団体・日本民間放送連盟(民放連)から、「地上デジタル放送の同時再送信」を行なうための「技術的なお墨付き」(認定証)をもらった。これにより、近々、地上波のテレビで放映されている番組を同じ時間にインターネット上で“放送”することが可能になる。

 交渉は2年越しだった。最初は、民放連内に交渉の窓口として、「技術ガイドラインをつくる委員会」を立ち上げてもらい、その後は民放連の技術審査会の要求に応じて、個別に「放送局が求める基準に達しているか」を審査してもらう日々が続いた。

 NTTコムの有馬彰・代表取締役副社長は、何度も「私たちも本気で取り組みますので、ぜひ、やらせてください!」と、NHKと民放連に頭を下げた。

 当たり前の話だが、通信の技術と放送の技術は、似て非なるものであり、しかも技術審査の権限は民放連側にある。NTT側が前提とするIP送信は、まだ確立された技術ではなかったので、甘い点は容赦なく突っ込まれた。

 これから3月まで、第2段階としてNTTコムは、全国に127ある民間放送局へ個別に申請して同時再送信の同意を得る。放送局の抵抗から、日本では絶対不可能だと思われた地上デジタル放送の同時再送信は、もうすぐ始まる。

「情報通信法」の本質は
“規制緩和”と“産業振興”

 通信業界と放送業界にとって、今、最もホットなテーマが「融合」である。ただし、それは単にテレビ番組がインターネットで見られるという状況のみを指すものではない。その向こうには、あらゆるメディアを巻き込んだスケールの大きな“地殻変動”が待っている。旧郵政省内で、最初に「通信と放送の融合」が模索されるようになったのは、1992年だった。