避難階段から屋上に
出られなかったのはなぜか?

 らせん階段や吹き抜けは開放感を演出できるので、戸建住宅でも多く設置されているが、各フロアが区画されず、連続性のある構造というのは、火の手が回るのも、煙が充満するのも極めて早い。防火の観点からは、かなり危険だといえるのだ。

 もちろん、条件さえ満たしていれば、区画されないらせん階段を設置することは法令で認められている。しかし、「法令で認められているから絶対に安心」ではないのだ。ここに防火の難しさがある。

 次に気になるのは、らせん階段とは別に屋上につながる階段が建物内にあったにもかかわらず、屋上に抜けるドアから外に出られなかったこと。各フロア別の死者数を見ると、19人とダントツで多いのは、3階から屋上に抜けるドア前の階段スペースだった。このドアが開かなかった理由は定かではないが、内部からカギが開くようにしていなければならないはずの場所だ。

 そして、この階段は防火扉で区画されていたのか、もしそうなら防火区画として適切に機能していたか、今後検証すべきだろう。というのも、せっかく防火扉などが設置されているのに、扉の前にモノを置いているなどで正常に作動せず、大火災になった例が後を絶たないからだ。2013年に起きた福岡市整形外科医院火災(死者10人)でも、防火扉が閉まらないようにロープで固定されるなどして、作動しなかったことが明らかになった。

 同じく、過去の火災事例では、せっかくの避難通路なのに、可燃性のモノを置いていたばかりに火の手が回ってしまい、逃げられなかったというケースも散見される。