ハワイ路線を舞台にした日本航空(JAL)と全日本空輸(ANA)の激突を描く「JAL vs ANA 新ハワイ対戦」特集の第3回。1954年からハワイを開拓してきたJALが、ANAの攻勢をかわす切り札にしたのが、地元の老舗、ハワイアン航空との提携だった。他方、関西~ホノルル線にはLCCが参入し、2020年には羽田空港の発着枠拡大によりさらに供給量が増える見込み。大混戦の行方やいかに――。(ダイヤモンド編集部 柳澤里佳)
ハワイアン航空がJALに7年越しのラブコール
旧パートナーのANAが提携に“待った”をかける
「日本航空(JAL)と米ハワイアン航空が独占的に提携すれば、一部路線で競争が阻害される。運賃が高止まりし、利便性に欠ける」――全日本空輸(ANA)は4月、こうした内容を含む意見書を米国運輸省に提出した。JALとハワイアンが共同事業開始に向けた独占禁止法適用除外(ATI)を米国運輸省に申請したことに、「物申した」のだ。
JALとハワイアンが提携を発表したのが2017年9月のこと。2社が手を組んだ理由は、ずばり「ANAのA380ブロック」だ。
「A380はマーケットを変えるかもしれない。けれどJALとハワイアンのパートナーシップもマーケットを変えるだろう」とハワイアンのマーク・ダンガリーCEO(当時。現在は退任)は発表会見の席上で強気な発言をし、JALの植木義晴会長(現在。当時は社長)は終始、笑みがこぼれていた。ハワイアンの「7年越しのラブコール」により、提携は実現した。
10年に日本へ進出したハワイアンは提携相手を探していて、「第1希望」はJAL。JALは60年以上前からハワイ市場を開拓し、圧倒的なプレゼンスを誇っていたからだ。
しかし、当時のJALは破綻してそれどころではなかった。ハワイアンはANAと12年からコードシェアやマイレージで提携し始めた。
ANAにはすでに米ユナイテッド航空という、北米路線で全般的に共同事業を行う強固なパートナーがいた。そのため、ハワイアンとのコードシェアは限定的なものにとどまった。
ANAが16年にハワイ路線で超大型機A380を3機導入すると決めたことで、「経営方針が合わなくなった」とハワイアンのテオ・パナジオトゥリアス上席副社長は明かす。ハワイアンはANAを離れ、JALへと駆け寄った。