銀行員は外で求められる人材

デジタル化が進む銀行界では、事務部隊を営業に回す動きが進んでいる。だが、横浜銀行(神奈川県)を傘下に持つコンコルディア・フィナンシャルグループの川村健一社長は難しいと断言する。では「地銀の雄」はどんな姿を見据えるのか。規制緩和の先に待つ地銀の “絵姿”を語ってもらった。(聞き手/ダイヤモンド編集部 田上貴大)

――売上高が伸び悩む中、銀行界は今コストをどう削るかということに一生懸命に取り組んでいます。すでにロボティック・プロセス・オートメーション(RPA、事務作業の自動化)を進めていますが、足元でどれだけコストを削れていて、今後はどこまでその削減量を伸ばしていく考えですか。

 ミクロの話はどんどん進んでいます。住宅ローンの審査については、従来は顧客が不動産屋で書いた住宅ローンの申込書が紙で送られてきました。あるいは顧客が申込書をパソコンで打ちました。そしてこれらを、(行員が)審査システムにまた入れ込んでいたんですよ。それが今は、RPAが行員の代わりに読み込んでいます。

 住宅ローンの審査の仕事は単純で、システムに入れ込めばほとんど終わりになります。その後に点数が出てきて、仮に点数が悪かったとしても「こういうところがあるから融資をやりましょう」と考える作業だけが残っています。つまり、住宅ローンの審査業務は、これでほぼ自動化されてしまい、住宅ローンセンターの仕事の半分くらいはなくなりました。

川村健一氏Photo by Kazutoshi Sumitomo

 また今までの悩みどころは、業者が幾つもの銀行に申込書を出すので、ローン金利を提示してOKを出しても、そのうちの3割しかローンの実行にならないんです。だから7割は無駄になってしまう仕事であり、それを自動化するわけです。こう聞けば、この成果は大変なことなんだと思うわけですよ。住宅ローンセンターで働いてる約100人以上の人たちの仕事が半分になっているんです。

 ですが、こんなことをやっていても、例えば銀行全体の人件費が3割減りましたとか、人数が2割減りましたとはなってないんですよね。それはこれからです。私たちも行内で、「そういう人たちを事務から解放してもう一度勉強してもらい、営業に回します」と説明していますが、これがなかなか難しいですよ。

 昨年度までの中期経営計画では、各部署から100人集めて投資型商品の販売部門を100人増員しました。月間の1人当たりの成約件数の分布図を見ると、一般的には中央に多くの人が集まり、両サイドが下がる山ができます。しかし、新規に100人増員したら、山が二つになりました。新規の100人は月に平均3件くらいで、以前から担当している人たちは月に平均10件くらいなので、山が二つできてしまう。これが1年間の成果でした。そんなに簡単ではないなと思いましたね。

 また相談業務でいえば、私たちは高度な相続対策はマンツーマンで対応しています。そのうち、「相続が発生したのですがどう手続きするのでしょうか」といった相談の事務だけなら(他の事務作業をやっていた人でも)対応できると思っています。ですが、(デジタル技術を駆使して)5年間で800人分の事務作業が浮きますが、この作業に800人は要らないですよね。

 ここが悩みどころですね。人数をどんどん増やし、貸し出し業務を足で稼いでこいという時代ではないのです。