古い保険を解約し、新しい保険に乗り換えさせる。この過程で「お客様本位と言えない営業があった」と、かんぽ生命の植平光彦社長は認めた。

「お客様本位ではない」というのは、客に不利益を与える保険の販売があった、ということだ。

 日本郵政に有利な「新規」の契約を勧める一方で、新規の契約を結んだ後も旧契約を解除せず、半年以上、保険料を二重払いさせる。顧客に無断で書類を偽造して契約するなどの案件が続々、明らかになった。

 この種のズルは、営業現場で珍しくはないが、今回の件が悪質なのは「お客が損する保険」に乗り換えさせたことである。

 かんぽ生命は2017年10月、「新ながいき君」という終身保険を売り出した。セールスポイントは「短期の入院でも保険金がおります」だ。

 近年、入院日数は短くなっているが、従来の生命保険では一定期間を超える入院でないと保険金はおりない。「新ながいき君」は、入院したその日に5日分の入院費補助が出るので職員にとって「売りやすい保険」だった。

 だが、この保険はお客にとっての「毒」が仕込まれていた。予定利率が年1%から0.5%へと引き下げられたからだ。

 予定利率とは、保険料を算定する根幹に関わる金利だ。生命保険は満期や死亡時まで超長期の固定金利が決まっている。預金もそうだが、金利は高い方が顧客に有利なのは生命保険も同じ。支払う保険料が安くなったり、満期返戻金が大きくなったりする。

 予定利率の高い保険に入っていれば「少ない保険料で大きな保障が買える」ということだ。

 かんぽの予定利率の推移を見ると、昭和59年から年6%だった。平成2年に5.75%へと下がり、平成6年に3.75%、その後、5回切り下げられ2017年4月から0.5%になった。

 平成が始まった頃加入した人たちは「利回り6%」という、今ではあり得ない高金利が生涯約束されている。5%台でも業界では「お宝保険」と呼ばれている。だが、多くの加入者は自分の入っている保険が「お宝」であることに気づいていない。

「お宝保険」は保険会社にとって「お荷物保険」である。アベノミクスの低金利政策で予定利率に見合う利回りを稼げる運用先は見当たらない。

 逆ザヤになっている「お宝」を解約させ、金利の安い保険に乗り換えさせることは、かんぽ生命にとって都合がいい。

 どのような論議が経営会議でなされたか明らかではないが、2017年に「新ながいき君」が売り出され、怒涛の「乗り換え」が各地の郵便局で始まった。