プロジェクトがもめて頓挫するのは
同床異夢の組織である

――業種業態問わず、さまざまな企業でITプロジェクトが進んでいます。IT開発経験の少ない企業がつまずきやすいポイントは、どんなところでしょうか。

 一番問題が起きるのは、要件定義(注:導入するシステムにどんな機能を持たせるのか、機能の範囲や性能などを決めておくこと)ですね。開発経験が少ない企業だと、この「要件定義をしなければいけないもの」に抜け漏れが出てしまうことがあります。

 また、「この機能は必要かどうか」とか「いつまでに必要なのか」といった意思決定がスムーズにできないことも多いです。システム担当者がやりたいことと、実際にシステムを使うエンドユーザー部門の意見が食い違ってしまう。それをまとめられる人がいないので、上層部に判断を委ねることになり、余計に時間がかかる…ということが起こります。

――システム利用者が多くの部門に及ぶと、利害関係が生じてプロジェクトが進まないという話はよく聞きます。

 プロジェクト成功に向けてうまく動けていない組織は、「このシステムができたら会社がもうかる」「うちの部署がこう変わる」といった「デジタル化したときの夢」を共有できていません。同床異夢だから、実現すべき姿にズレが生じてしまうのです。