開発途中で、「うちの部署にこんなデメリットがあるなんて知らなかった!」というクレームが入るのはよくある話。開発に入る前に、関係者を集めて具体的な業務とメリット・デメリットをみんなで語り合い、模造紙やホワイトボードにまとめるなどして、イメージをビジュアル的に共有することがプロジェクトの第一歩です。この段階で、プロジェクトによって「損をする部門」があるのであれば、会社全体の利益と照らし合わせたうえで、事前に対策を考えておくべきです。
多くの人が関わるプロジェクトにおいて、現場のリーダーには、熱意とイメージ力、そして議論をファシリテートする力が必要です。そして、そのリーダーにきちんと権限が与えられていること。現場に決定権がなければ、結局上層部にお伺いを立てなければならず、滞りが出てしまいます。
ITを「本業」だと考えない企業に
デジタル・トランスフォーメーションはできない
――著書『システムを「外注」するときに読む本』の出版から2年がたちました。企業を取り巻く環境も随分変わったと思いますが、最近気になる問題はありますか。
細川義洋:著
発行年月:2017年6月
昨今のプロジェクトでは、AWS(アマゾン)やAzure(マイクロソフト)などのクラウドサービスを活用することが多くあります。クラウドサービスはそれぞれサービス内容が異なるので、できることとできないことに違いがあるのですが、これを正しく理解できていない。そのため、できると思っていたことが、いざ開発してみると実現できないということがあるのです。
しかも、クラウドサービス事業者はサービスを提供するだけで、それ以外の部分には責任を持ちません。ベンダーも自社の製品ではないため、必要な知識や検討事項に抜け漏れが出ることもあります。こうしたトラブルは今後増えていくでしょう。
対策として、ユーザー企業はクラウドサービス事業者が開催する研修に参加するなど、積極的に情報を収集すべきです。複数のクラウドサービスのサービス内容、セキュリティー、契約内容の比較検討をユーザー企業自身でやったほうがいい。うまくいかなくて、最終的に困るのは自分たちなのですから。
忙しい業務の合間を縫って勉強するのは大変だと思われるかもしれませんが、私は、ITに関する知識の習得は「本業」として考えるべきだと思います。デジタル・トランスフォーメーションでは、IT中心に仕事をしていくことになります。「ITはうちの専門分野ではない」「ITはスタッフ部門の仕事」という認識は改めなければなりません。