食の専門家と言われる栄養士たちでも「三大栄養素をバランスよく食べましょう」と言います。でも、これこそ不勉強な専門家が流布する「間違っている食の常識」だ。じつは多くの人は気づいていないが、厚生労働省も、かつては旗を振っていた「1日30品目食べましょう」という指針を、こっそり修正していた。今回は『医者が教える食事術2 実践バイブル』の中から、「バランスのいい食事」「1日30品目食べよ」という間違った常識について紹介する。
「バランスがいい」の
美辞麗句にダマされるな
食事について、よく言われるのが「三大栄養素をバランス良く摂りましょう」というものです。この「バランスのいい食事が大事」というフレーズこそ、食に関する長年の思い込みや間違った常識の代表です。
実際、私が糖質(=炭水化物)の摂り過ぎがよくないことを訴えると、「でも、三大栄養素はバランス良く摂るべきでは?」と反論されることがあります。
三大栄養素は、糖質(炭水化物)、脂質、タンパク質の3つを指します。ほかに、ビタミンやミネラルも必須の栄養素で、これらを合わせ五大栄養素と呼ぶこともあります。しかしながら、糖質、脂質、タンパク質はエネルギーを産出することや、筋肉や骨、全身の細胞をつくるという働きを持つため特別に重要視されているのです。
1日に必要なエネルギーを三大栄養素からどのような割合で摂取したらいいかについて、厚生労働省は指針を示しています。その指針に沿った食事を、栄養士たちは「バランスがいい」と評価しているわけです。
厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準(2015年)」によれば、最適なエネルギー摂取バランスは、炭水化物から50~65%、脂質から20~30%、タンパク質から13~20%となっています。これは20年以上前からの日本糖尿病学会の食事の基準とまったく同じなので厚生労働省はこれを採用していると思われます。
もっとも、この数字を覚える必要はありません。ただ、厚生労働省や糖尿病学会の基準では炭水化物の割合が多いということだけ感じ取ってください。
炭水化物とタンパク質は1グラムで4キロカロリー、脂質は1グラムで9キロカロリーのエネルギーを産出します。そこで、単純に計算してみると、たとえば、1日に2000キロカロリー必要としている人の場合、炭水化物250~325グラム、脂質45~67グラム、タンパク質65~100グラムくらい食べろということになります。
しかし、その指標に従うと、たいていのビジネスパーソンは糖質過剰に陥ります。本当は、もっと糖質を減らし、脂質の割合を増やしたほうがはるかに健康的な食事になります。
それに、どの人に対しても画一的な基準で考えること自体が間違っています。太っている人とやせている人では、三大栄養素の割合は変えてしかるべきです。太っている人が厚生労働省の指針で食べていたら、ますます太っていきます。