ゼロからの出発を成功に導いた
パーソナルブランド

 高橋和子さんは、専業主婦から整理収納コンサルタントのプロへと、まさにパーソナルブランドによって人生を変えたといえます。

 私が高橋さんを知ったのは、彼女が整理収納のプロとして看板を掲げて6ヵ月という頃でした。この段階では整理収納コンサルタントとして、自分でつくったホームページで営業をするだけで、利用者は月に数件だったといいますから、ビジネスとして成立していたとはいえない状態でした。

 その高橋さんもパーソナルブランドの構築に取り組んで1年余の現在では、パートスタッフの主婦3名と契約し、自らは週休2日を確保することが精いっぱいという多忙な日々を送っています。

 高橋さんがパーソナルブランドの構築によって、いかに整理収納をビジネスとして成立させたか、その過程に注目してみてください。

専業主婦からの起業

 高橋和子さんは20年間の専業主婦生活を経て、40代半ばに就職活動を試みました。しかし事務職として雇ってくれる会社はなかなかありません。そこで、高橋さんは整理収納が得意だという点を、仕事に生かせないかという思いから、NPO法人日本ハウスクリーニング協会認定の「3Sコーディネーター1級」資格講座に参加しました。3Sとは「整理、収納、清掃」を指します。高橋さんは、資格を取った時「この仕事こそ私の20年の主婦力が活かせる」と直感したといいます。

 講座を受講しているうちに、高橋さんは片づけられない人には心理的なことも要因としてあることを知り、日本能力開発推進協会認定の「メンタル心理カウンセラー」資格も取得します。さらに「3Sコーディネーター ライセンス指導員」の資格も取得して、自分が客観的な評価に裏付けられるように条件を整え、「フェリシア ラボ」を起業しました。

 しかし、冒頭にお話しした通り、創業当初は整理収納コンサルタントとして名乗りをあげたものの、知名度は一向にあがらず、依頼もなかなか来ませんでした。

主婦歴20年の女性目線で
パーソナルブランド構築

 パーソナルブランドを確立する為の最初のステップである自分自身の本当の強みを決定するにあたっては、転勤で整理収納に工夫するようになったという背景や、介護で苦労したという経験の2つを軸として、パーソナルブランドを構築することを高橋さんに勧めました。弱さや悩みを理解し、共感してくれる存在、この人なら自分のことをわかってくれるかもしれないと感じられる整理収納専門家であることが高橋さんの強みだと考えたからです。整理収納の技術以上に、主婦歴20年の経験を基に顧客の話に耳を傾ける高橋さんの人間力に価値を置こうというプランです。

 現在整理収納ブームもあり、整理収納のプロが急増したことで、通常整理収納の注文はあまりリピートされるものではありません。また顧客が別の顧客を紹介してくれるケースも非常に稀です。また、整理収納においては、最終的なアウトプットでの差別化ではなく、そこに辿り着くまでの過程での差別化がメインになる為、差別化された部分が非常に見えにくく、そのため高橋さんの仕事では、永く取引を続けてくれる良い顧客を得ることが非常に難しかったのです。だからこそ「高橋さんでなければならない」というパーソナルブランド構築によって高橋さんの存在自体をブランド化する必要がありました。