Photo by Toshiaki Usami

 東京都港区麻布十番。数々の有名なバーや飲食店が軒を連ねる駅前の一等地に、壁一面に「SOCIAL APARTMENT」と大きく書かれた6階建ての建物が出現した。6月にオープンしたシェアハウス、「ソーシャルアパートメント麻布十番」だ。

 シェアハウスとは、キッチンやシャワーなどを住人全員で共有、部屋は1人ずつ個室を利用する共同住宅のこと。

 全27世帯から成るこの共同住宅は、おしゃれな外観とは裏腹に、実は築40年を超える古い物件だ。ところが一歩足を踏み入れると、そこにはデザインに凝った50平方メートルのラウンジが広がる。まるで外国のカフェのようなこの空間が、居住者の共用ラウンジなのだ。

 さらに地下1階には「たまり場」と呼ばれる天井の高い一室に、これまたおしゃれなテーブルやソファが並び、パーティも可能な音響設備まである。

 コンセプトは、「ラグジュアリーな共用部」。行き過ぎた個人主義の根付く日本の賃貸住宅に、住人同士が交流できる新たな住居を──。自ら「ソーシャルアパートメント」と呼ぶ、この物件を運営しているのが、山崎剛が設立したグローバルエージェンツだ。

 企業の独身寮を安く入手し、改装して賃貸物件を開発するビジネスモデルを確立している。バブル期に建設された企業の独身寮は全国に10万戸あるといわれ、今後さらに企業のコスト削減の一環で市場に物件が放出される見込みだ。

 通常のシェアハウスとの違いは、何といっても交流のための共用スペースの「豪華さ」にある。そのため家賃は他のシェアハウスより高めだ。一般にワンルームを基準にすると、シェアハウスの家賃は0.8倍、1LDKは1.5倍とされるが、山崎は「新たに1.2倍のレンジの賃貸住宅市場を創出したい」と話す。