ベストセラー『教養としてのワイン』の著者が、数々の一流ワインをオールカラーで解説した注目の新刊『高いワイン』(ダイヤモンド社)が9月19日に刊行された。今回は本書から抜粋する形で、テーブルワインという格付にもかかわらずイタリア初の偉業を達成した「サッシカイア」について紹介します。

イタリアのワイン法に縛られない、前衛的なワイン

渡辺順子(わたなべ・じゅんこ)
プレミアムワイン代表取締役。1990年代に渡米。1本のプレミアムワインとの出合いをきっかけに、ワインの世界に足を踏み入れる。フランスへのワイン留学を経て、2001年から大手オークションハウス「クリスティーズ」のワイン部門に入社。NYのクリスティーズで、アジア人初のワインスペシャリストとして活躍。2009年に同社を退社。現在は帰国し、プレミアムワイン株式会社の代表として、欧米のワインオークション文化を日本に広める傍ら、アジア地域における富裕層や弁護士向けのワインセミナーも開催している。2016年には、ニューヨーク、香港を拠点とする老舗のワインオークションハウス Zachys(ザッキーズ)の日本代表に就任。日本国内でのワインサテライトオークション開催を手がけ、ワインオークションへの出品・入札および高級ワインに関するコンサルティングサービスを行う。著書に『世界のビジネスエリートが身につける 教養としてのワイン』『高いワイン』(共にダイヤモンド社)がある。

 1990年代から世界に新風を巻き起こしているのがイタリアの「スーパータスカン」です。スーパータスカンとは、イタリアのワイン法に定められた品種・製造法に縛られないトスカーナ州で造られるワインを指します。

 その前衛的なマインド、そしてカリフォルニアの高級ワインを彷彿とさせる味わいから、今ではオークションで争奪戦が繰り広げられる、イタリア高級ワインの代名詞となっています。

 そんなスーパータスカンの先駆けとなったのが「サッシカイア」です。1940年代、フランスから持ち帰ったボルドー品種カベルネソーヴィニヨン種の苗をトスカーナの畑に作付けしたことから、そのワイン造りはスタートしました。

 当時のイタリアではフランス品種の使用はご法度だったため、サッシカイアは格付最下位の「テーブルワイン」に属することになりました。しかし、そんな格付を物ともせず、1985年産ではイタリアワインで初のパーカーポイント100点満点(※)を獲得。テーブルワインという格付でありながら最高評価を獲得し、スーパータスカンの象徴となりました。

※「パーカーポイント」とは、アメリカのワイン評論家ロバート・パーカーによる採点のこと。パーカーポイントで高得点を獲得すると、たとえそれが無名なワインであっても一躍スターダムにのし上がれるほど圧倒的な影響力を誇る。

テーブルワインでありながら最高評価を獲得した「サッシカイア」。『高いワイン』(ダイヤモンド社)より抜粋

 サッシカイアは、2018年にも、ワインスペクテーター誌が毎年ブラインドテイスティングで審査する「トップ100ワイン」で1位に選ばれています。フランス産品種を使ったサッシカイアは、ボルドーのグランヴァン(一流ワイン)が表現できない、高級でありながらカジュアルさを併せ持つ、イタリアらしい味わいを引き出すことに成功しました。時に重々しさを感じるカベルネソーヴィニヨン種が、イタリア人の手によって気負いのない自然体なものに変化しています。