よく比較される香港と上海だが
最大の違いは「自由さ」

英国統治時代の1970年代に建てられた公共住宅。ここを出発点に多くの人がチャンスをつかんだ

―― 一方で、香港のデモ活動の中核を成すのが学生ですが、1997年の返還時には生まれていない子どもたちもいます。この世代は「レッセフェール」を知らない可能性もあります。

 ある経験を10年は継承できても、30年は継承することは難しい、一般的にそういわれています。今年は天安門事件から30周年ですが、当時の中心世代は熟年層入りしています。民主の女神といわれる22歳のアグネス・チョウさんも天安門事件を知りません。

 しかし、2019年6月、逃亡犯条例がきっかっけで同月9日には100万人が、16日には200万人と、中国政府の予想をはるかに超える香港市民が街頭に繰り出しました。香港の人口は750万人ですから、これは驚くべき数字です。これが示すのは、「レッセフェール」はその土地で生まれ育てば自然に身につくということです。天安門を知らない世代であっても世代間ギャップを埋められるということです。

 その点で私はこの運動が長続きするのではないかと見ています。今後の展開としては、今年の晩秋から年末にかけて1つの山場になると思います、また、習近平政権が矛を収めないという姿勢が続けば、悲劇が生まれる可能性もあります。

――世界における香港の価値をもう一度見直すべきですね。

香港は「一帯一路」構想に取り込まれ、中国との一体化が進む

 公共のために大枚を費やし、そこに自分の名を刻んできたのは、華僑華人の伝統ともいえる文化です。自己の名声も回りまわって社会利益を促進するという「小さな政府」の在り方を、大陸の政権が受け入れる度量がなければ、香港を統治することはできません。下手をすれば香港をつぶす結果になります。それは台湾についても同じです。

 返還から20年余が過ぎましたが、政治面からその自由が狭められていることは否定できません。本来ならば犯罪者とはいえない“政治犯”が、大陸に送り返される「逃亡犯条例」が最たる事例です。香港はまさに地球上、他に類を見ない世界を作り上げたわけですが、もしもこの逃亡犯条例を飲めば「レッセフェール」の空間はさらになくなってしまいます。

 この点は同じ国際都市で、よく香港と比較される上海を考えればよくわかります。上海は香港に並ぶ繁栄を謳歌していますが、香港のような「レッセフェール」の自由な雰囲気を欠いています。自由を十分に謳歌でき、かつ自分の努力で人生の道を切り開きうる街、香港。国際社会はもっとここに注目するべきではないでしょうか。