「コールドチェーンなんて記述は消せ!まるで違うじゃないか」――。水産卸大手・中央魚類の会長で、豊洲市場協会会長を務める伊藤裕康氏は昨年、都が農林水産省に豊洲移転の認可申請のため作成した文書を都職員から見せられた際、こう指摘したと打ち明ける。伊藤氏は豊洲移転を推進し、「築地時代に比べて衛生管理のレベルが格段に上がった」と現在の市場を高く評価する立場だが、この点だけは譲れなかったようだ。

豊洲市場協会の伊藤裕康会長
豊洲市場協会の伊藤裕康会長 Photo by S.O.

 例えばターレは当初、建物内だけを走らせる想定だった。ところが、これでは業務が回らないという市場関係者の反対で、開場直前にルールを改め、建物の内外を行き来するようになった。

出入り口にある消毒マット
当初の想定と異なり、ターレが屋内外を行き来するようになったことで、出入り口には消毒マットが置かれるように 写真提供:市場関係者

 その結果、伊藤氏の指摘の通り、都が当初描いていたコールドチェーン構想は崩壊。ターレの出入りする場所に「消毒マット」を置くなど弥縫策に苦心している。出入り口には自動シャッターがあるが、荷物の積み下ろしを頻繁に行っている時間帯は開けっ放しである。

 水産仲卸棟から荷物を運び出すトラックも、当初は荷台を建物に密着させて外気の流入を防ぎ、コールドチェーンを実現するとしていた。しかし実際にはそんな時間もスペースもなく、場所によっては屋根のない駐車場でトラックが荷物の積み下ろしをしている。

 そして出入り口の“開けっ放し”により、市場内ではネズミやゴキブリの目撃証言が出ている。温度管理は築地時代と比べれば改善された点はあるものの、思い描いたほどのハイスペックな施設には到っていない。