ベリートップを育てる環境づくりを

 最後に、これからの日本のためにぜひとも必要であると私が考えていることをお伝えしたいと思います。それは「ベリートップを育成する」ための教育環境です。

 近年、日本の学生の留学希望者は減少傾向にあると聞きます。その要因はさまざまなのでしょうが、一念発起してシンガポールに渡った私に言わせれば、まさに「百聞は一見に如かず」で、若いうちに日本以外の世界を見ておくことは、何にも代えがたい非常に貴重な経験だと断言できます。

 シンガポールでは、世界の有名大学を誘致しており、各国から留学生を受け入れています。しかし残念なことに、日本人の姿はあまり見かけません。一方で、勢いがあるのが韓国人。シンガポールに「母子留学」している人もおり、英語学校などは韓国人であふれています。

 また、シンガポールで成功している華僑の子息は、必ずといっていいほど欧米のインターナショナルスクールに通い、高校から欧米に留学しています。

 グローバル社会の中でベリートップになることは、もちろん並大抵の努力では実現できません。しかし、ひとたび日本の外に目を向ければ、ライバルたちは将来に備えて準備をしているのです。こうした人たちと対等に渡り合うためには、日本人も早くから海外を経験する必要があると痛感しています。

おわりに

 本連載の第1回第2回でもお伝えしたように、いま、日本からさまざまな形で「仕事」が海外に流出しています。日本にいるとなかなか気づかないかもしれませんが、私が住むシンガポールからは、ものすごいペースで日本から仕事の流出が進行している様が手にとるようにわかります。

 そんなグローバル時代の中で生き残るには、いかに人と違う能力を身につけ、それをうまく宣伝できるかが重要になります。

 グローバル化に向かうこの流れは、加速こそすれ、ブレーキがかかることは今後もないでしょう。そうであれば、この潮流をむしろ逆手にとり、世界に挑戦する良いチャンスだと考えてはどうでしょうか。個人個人が少しだけ意識を変えて仕事をすることで、日本全体が元気をとり戻し、再び世界から尊敬される国になれるのではないか――私はそう考えています。

 日本の外から見ていると、日本には世界に誇れる商品・サービスがたくさんあります。日々の仕事に磨きをかけて「世界のプロ」になれば、恐れるものなど何もないのです。

 このコラムが、みなさんの行動のきっかけになることを願っています。

(了)