そもそも、インフレを目指して行われていた金融緩和だが、収益不動産の新規供給に資金が大量に流れ込むと、賃貸住宅需給が緩和し、家賃デフレに拍車をかけるという矛盾に陥っていた。そんななか、足もとでは金融庁の口先介入で需給が逼迫し、家賃がインフレし始めているのだ。

 こうして日銀が抱えていた2つの悩みが、金融庁の働きによって結果として解決に向かう状況になっている。その悩みとは、1つが金融緩和で不動産にお金が流れ込み、不動産価格の過剰なインフレを招きかねないこと。もう1つは、賃貸住宅の新規供給に資金が流入し、需給が悪化して家賃が下がることだ。2つの組織がどこまで申し合わせているのか国民には知る術もないが、双方の懸念を結果として回避できていることは確かだ。

深刻な家庭への打撃
不動産の「一段高」に備えよ

 こうして、日銀にも金融庁にも都合がいい環境となったため、現状からの大きな政策転換が起こる可能性は低くなった。金利低下による不動産価格の上昇は限界まで来ている。ここからは、賃料が上がることで物件価格が上がる段階に移るだろう。不動産はもう一段高へと動き始めている。

 不動産市場は下がるどころか、当面安定的に上がり続ける様相を帯びてきた。賃貸居住者は、家賃が上がることを覚悟した方がいい。長引く不動産の好況は、持ち家の価格上昇だけでなく、賃貸物件の家賃まで上昇させ、深刻な家庭の圧迫要因になりつつある。

「大打撃」への備えはできているか――。そのことが今、問われている。

(スタイルアクト(株)代表取締役/不動産コンサルタント 沖 有人)