面談3回目(その翌日)
面談の後、Fさんからメールが来ました。セミナーや本を推薦してほしいとの依頼です。そのメールに返信を打っていると、X部長がふらりと訪ねてきました。
X部長「昨日、Fと話をしてくれたみたいですね。これからどのように接していけばいいですか?」
キャリアコンサルタント「Fさんや彼の後輩の態度の変化に注目していてください。そして、何か良い結果があれば、どう接したら良いか、ご自分で考えてみてください」
あえて具体的な対処法には触れないようにしました。それをうのみにして実行するのではなく、自分自身の考え方で職場の現状を改善してもらいたかったからです。
キャリアコンサルタント「今回、X部長がFさんの件で当室を訪ね、さらに本人を送り込んでくださったことに感謝しています。職場のコミュニケーションに関心を持つこと、社員の顔が元気かどうかを見ていることが、実は業績にもつながり、トラブルが激減することにもなるんです」
後日談
数ヵ月後、「課長を何人かずつ集めるので、研修を企画してほしい」とX部長から依頼が来ました。Fさんの指導法やコミュニケーションに変化が表れ、後輩たちがイキイキと働くようになった、と感じられたからです。そこで、部署に特化した研修を即刻実施することが決定しました。
研修の場では、事例をもとにお互いに話し合ってもらいましたが、意識の違いが多く見られ、同席した部長から、職場の社員を守る前向きな発言が出たことに感動しました。
事例まとめ
上司が業績だけでなく、健全な職場運営に目を向ければ、部下が抱えているトラブルが早期に発見でき、スムーズに手が打てるようになります。職場活性化を命じるだけの上司ではなく、実際に悩み、相談し、分析し、手を打つ姿勢がいま、強く求められているのだと思います。現場が「アンテナ機能」を持つことの大切さを痛感した一例であり、「人材育成機能」も発揮することができました。