CASEショックで
トヨタに忍び寄る「3つの危機」

 CASEの破壊力は凄まじい。既存の完成車・自動車部品メーカーは、否が応でも変容を迫られる。大まかにいえば、トヨタをはじめ既存の自動車産業には三つの危機が忍び寄っている。

 一つ目は、既存の製品や既存のビジネスモデルが消える危機だ。CASEの「E」である、電動化の進捗が加速度的に進めば、エンジンを含む内燃機関部品は用済みになる。

 ビジネスモデルも激変する。開発して、生産して販売するという、製造業に特化したハードウェアのビジネスではなく、移動全体をモビリティーという“サービス業態”として捉える「MaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス)」というビジネスに取って代わられる。既存ビジネスの消失は、「最強系列」を誇るトヨタのサプライヤーピラミッドを崩壊させるほどのインパクトがある。

 二つ目は、CASE領域で稼げずジリ貧になる危機だ。電動化のための電池投資一つ取ってもそうだが、先行投資ばかりがかさんでおり、新領域で稼ぐモデルを確立できた自動車メーカーはまだない。

 最後の三つ目は、伝統的な自動車産業を壊す「破壊者」――モビリティー領域への新規参入者――に敗北する危機である。米グーグルや米アップルなどのITジャイアント、ソフトバンクなどの「サービス・ソリューション・プロバイダ(完成品・基幹部品だけではなく、自動運転などソリューションやシステムも提供)」、独ボッシュやデンソーなど新領域で世界標準を握ろうとするメガサプライヤーなどが有力な破壊者候補である。

 中でも、日系自動車メーカー幹部が最も脅威だと認めている破壊者が、中国企業だ。伝統的な自動車メーカーとITジャイアント、ベンチャーが共存し、中国国内で自動車製造からサービスまでの「分業体制」が確立されている。開発スピードが早く、「現在は1車種につき4〜5年を要する開発期間が1〜2年に短縮する日がやってくる」(自動車メーカーのエンジニア)。

 技術革新のキャッチアップ力も尋常ではない。CASE関連のパテント数ではトヨタがダントツ首位だが、中国企業の台頭が目立つ。早晩、このランキングの上位に中国勢がランクインすることは確実だ。

 既存事業を切り捨てる難しさ、新領域で稼ぐことの難しさ、異業種との競争で勝ち切る難しさが重なり、トヨタを筆頭とする日本の自動車メーカーは経験したことのない緊急事態に直面している。