時価総額で約3倍の開きがある、“小が大を食う”買収提案が受け入れられるかどうかは定かではないが、米ゼロックスは業界の在り方に一石を投じた。

 再編機会を逃した富士フイルムHDだが、転んでもただでは起きなかった。

成熟産業にあって
優良なキャッシュ・カウ

「ドキュメント業界を成熟産業ととらえる向きもありますが、私は新しいやり方やサービスを提供できないことに起因すると考える」。ドキュメントを切り口にITソリューションを強化する古森会長兼CEOは強気な姿勢だが、ペーパーレス化の進行で、「ドキュメン業界の先行きは厳しい」というのが衆目の見方だ。

 それでもこれまで業界再編が起きなかった要因の一つに、参入障壁の高さに守られ、各社に一定のうま味があったことがある。とりわけ複合機は光学、化学、機械技術などの高度なすり合わせが必要で、売り切り型ではないため大規模なサポート体制も備えなければならない。高い参入障壁に守られて、ドキュメント事業各社は安定的に稼いできた。

「大きな飛躍は期待できないが寡占市場なので事業としてはおいしい」と、ある業界関係者。斜陽産業だが稼げる間は稼いでおき、社内の成長分野にキャッシュを回したい。そんな思惑が透けて見える。

 国内大手4社(キヤノン、リコー、セイコーエプソン、富士ゼロックス)のドキュメント事業の営業利益率は10%前後とまずまず良い。富士フイルムHDではドキュメント事業(富士ゼロックス)が売上高で41%(18年度1兆0056億円)、営業利益で46%(同964億円)を占め、稼ぎ頭だ。