振り返れば、銀塩フイルムを主軸とする業態から大転換中の01年、前出のように富士フイルムHD(当時は富士写真フイルム)は富士ゼロックスを連結子会社化。医薬や化粧品など多角化へ急旋回する一方、富士ゼロックスは将来の成長ドライバーを支えるキャッシュ・カウとして存在感を示してきた。今回の完全子会社化によるシナジーや事業拡大で、25年3月期のドキュメント事業目標売上高は19年3月期比1.3倍の1兆3000億円に。6~7年で投資回収可能といい、「牛」はしたたかに成長する。

 財務インパクトは12日の第2四半期決算で早速表れた。非支配持分利益の取り込みで、純利益の通期見通しは過去最高の1620億円に。21年3月期の目標としていたROE8%も、1年前倒しで達成することになりそうだ。

どうなる?
富士「ゼロックス」ブランド

 5日の決定を受けて、米ゼロックスのジョン・ビセンティンCEOは「富士フイルムとの関係をリセットし、両社に大きな成長の機会をもたらす」と歓迎するコメントを出した。古森会長兼CEOも、「米ゼロックスとの間にしこりはない」と話した。だが、両者のコメントを掛け値なしと受け止めることはできない。

 焦点は21年3月に期限を迎える、ある重要な契約だ。

 米ゼロックスが富士ゼロックスに商標使用を認め、更に両社の直販エリアのすみ分け(富士ゼロックスがアジア、オセアニア。米ゼロックスがそれ以外)を取り決める内容。この契約を巡っては既にひと悶着あった。富士フイルムHDが18年6月に買収合意破棄による損害賠償を請求する訴訟を起こすと、対抗して米ゼロックスは21年3月をもって契約解消の意向を表明。富士フイルムHDは「欧米市場に進出で対抗する」と、応戦した。