決算説明会に登壇した孫正義会長兼社長孫正義会長兼社長は過去最大の赤字について「反省」の言葉を繰り返した Photo:つのだよしお/アフロ

ソフトバンクグループが、10兆円規模の投資ファンド事業で損失を出し、7000億円規模の四半期赤字を計上した。世界中のユニコーン企業を買いあさるという巨大ファンドの投資手法は岐路に立たされている。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

「私自身の投資の判断がまずかった」。6日にソフトバンクグループ(SBG)の決算説明会に登壇した孫正義会長兼社長の「反省」の弁で示されたのは、武器としてきた自身の「目利き」への懸念だ。

 10兆円の投資枠を持つ「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」の損失で、SBGの2019年4~9月期決算の営業損益は156億円の赤字となった。前年同期から1兆4000億円を超える記録的な落ち込みだ。

 この要因は、シェアオフィス「ウィーワーク」の運営会社である米ウィー・カンパニーへの巨額投資にある。

 10年に創業したウィーは、ビルのワンフロアや1棟を丸ごと借りて、それを不特定多数の利用者に転貸する不動産業が基本的なビジネスモデルだ。世界29ヵ国に528拠点を構え、会員数は52万人以上だ。事業は年々拡大を続けてきたが、創業から9年の間に利益は出していない。

 ウィーのシェアオフィスの貸出先は主にスタートアップ企業で、会員同士の交流を深める仕掛けを施して、一種のコミュニティーをつくり出すのが売り。そうした交流が新しい価値を生み出すといううたい文句で普通の不動産会社とは異なるビジネスモデルとされ、高い企業価値が付けられてきた。

 この企業価値を演出したのがSBGとビジョン・ファンドの巨額資金に他ならない。赤字のベンチャー企業にすぎないウィーに資金を注ぎ続け、9月末時点の累計投資額は103億ドル(約1.1兆円)に上っている。今年1月にはウィーの企業価値は470億ドル(約5兆円)に達したが、その後の上場準備で転機を迎える。