「第2のウィー」も?
ユニコーン買いあさる投資手法の曲がり角

 その理由として、かつてウィーと締結した株式買い増しの契約の存在がある。来年4月に15億ドルのワラント(株式買取権)を購入する契約で、ウィーが経営危機に陥った後もこの義務を解消する交渉は受け入れられず、株式転換価格の交渉に切り替えざるを得なかったのが実態だ。

 こうしてSBGはワラントの購入義務を前倒しで履行する代わりに株式の転換価格を引き下げ、保有する株数を増やして経営の関与を高める判断にかじを切った。

 金融支援のパッケージは、15億ドルのワラントの購入に加え、最大30億ドルの発行済み株式の公開買い付けとともに、新規に債券や信用保証で50億ドルの資金供給も実施する予定で、最大95億ドル(約1兆円)となる。

 ベンチャー企業の支援に巨額の資金を投じる異例の判断について孫社長は「今回は例外」と弁明したが、今後も「第2、第3のウィー」が出てくる懸念は拭えない。

 7~9月期は、未上場のウィーだけでなく、ライドシェア大手の米ウーバー・テクノロジーズ、ビジネスチャットアプリの米スラック・テクノロジーズなど上場企業の株価下落により、計25銘柄で1兆1276億円の評価損を計上した。今後、他の投資先の企業価値も急落するリスクはくすぶるが、孫社長自身も「投資に10勝0敗はあり得ない。同じような懸念はある」と認める。

 9月末時点で、ビジョン・ファンドの投資先は88社で、累計投資額は8.2兆円。すでに1号ファンドは投資枠10億円に達して新規投資は終了。予定通りに2号ファンドを立ち上げる計画で、SBGは自己資金で一部の運用を開始した。だが、他の資金の出し手は慎重にならざるを得ない。すでに複数の投資家が資金拠出の見直しに踏み切ったもようだ。

 ウィーは、ウーバー(5月10日に上場)や同じくライドシェア大手の中国・滴滴出行(DiDi)、民泊大手のエアービーアンドビーと並ぶユニコーン(企業価値10億ドル以上の未上場企業)の代表だった。今回の損失計上により、世界中のユニコーン企業に巨額の資金をつぎ込んで企業価値を引き上げるというビジョン・ファンドの投資手法は曲がり角を迎えている。