目論見書などでビジネスモデルの将来性に疑念が深まったほか、ウィー創業者のアダム・ニューマン氏の公私混同の経営や薬物疑惑などの問題が明るみに出た。さらに、ニューマン氏に普通株の20倍の議決権を割り当てるという計画も明らかとなり、9月末に予定していた上場が撤回に追い込まれた。

 ウィーの9月末の企業価値は78億ドル(約8400億円)まで急落。SBGは9月末までにニューマン氏を退任に追い込んだが、巨額の評価損を計上することになった。

 結果、7~9月期(19年度第2四半期)の投資ファンド事業の営業損失は9703億円に達し、SBGの営業損失は7044億円、純損失は7002億円に上った。いずれも1981年の創業以来、最大の四半期赤字だ。

 孫社長は、今回の損失計上の最大の反省として「ウィーの価値を高く見過ぎた」と振り返ると同時に、ニューマン氏の暴走を食い止めることができなかったガバナンスの問題を指摘した。

 だが、そのニューマン氏の奇抜さに入れ込み、持ち上げてきたのは孫社長自身に他ならない。

 もともとソフトバンクは、孫社長自身の目利きによるベンチャー投資で成長してきた。96年には、米ヤフー創業者のジェリー・ヤン氏とデビット・ファイロ氏の2人に惚れ込み、社員が5~6人だった同社に100億円を出資する決断を下した。また、2000年には、創業間もない中国のアリババのジャック・マー氏と面談し、会って10分もたたずして20億円の出資を即断即決したことが、現在の13兆円に上るアリババの保有価値につながっている。

 だが、ウィーについてはニューマン氏が経営に失敗したのは明らかだ。この経営者に賭けた孫社長の投資判断には疑問符が付く。今後のビジョン・ファンドの投資については、フリーキャッシュフローを重視して、創業経営者のガバナンスを評価する基準を設ける方針だ。孫社長の目利きに頼り切った投資スタイルに規律を導入する狙いがある。

 一方でSBGは、これだけの損失を計上したウィーについて損切りすることなく、全面支援に乗り出す。