決済に伴うトランザクションは今年のピーク時で1秒当たり54万4000件という膨大なアクセス数を記録したが、システムダウンすることなく乗り切った。世界最大のネット商戦で鍛え上げられたこのサーバーシステムは、近年はクラウドサービスとして外部にも提供され、アリババにとっての新たな収益源となっている。傘下のモバイル決済システム、アリペイの不正取引防止プログラムも、毎秒6100万件の取引を監視できるほど高速化された。
仮想空間においてだけでなく、物流にまつわる技術やノウハウも飛躍的に向上している。かつては日本以上に「物流崩壊」が問題となり、山ほどの荷物を配達し切れないと逃げ出した末端の配送事業者もいたくらいだ。この物流崩壊は、ITと資金をつぎ込むことでほぼ解消している。
例えば過去のデータを駆使した予測技術で、セール前に消費者に近い倉庫に在庫を確保。また、高速鉄道(日本の新幹線に相当)を貨物便としてチャーターしたり、海外からの輸入品配送のために貨物機を100機確保したりした。その結果、物流崩壊を乗り切ったばかりか、大都市では注文した翌朝には商品が届き始めており、消費者からは改めて驚きの声が上がっている。
販売データで製品開発
「アリババ製技術」を資生堂が輸入する日
このアリババのダブルイレブンが、日本企業にとって大きなビジネスチャンスであるのは言うまでもない。ユニクロ(ファーストリテイリング)は11日午前0時の商戦開始からわずか16分で、販売額5億元(約80億円)突破を宣言(写真)。商戦終了時点では米アップルや米ナイキなどと共に、GMV10億元(約160億円)を突破した15ブランドに入った。
また輸入品のカテゴリーでも、ブランド別ランキングのトップに美顔器、化粧品のヤーマン、3位に花王、7位にムーニー(ユニ・チャームのおむつブランド)と三つがランクインした。国別輸入元で見ても、日本が米国、韓国、オーストラリアなどを抑えて4年連続のトップになっており、中国の消費者に日本製品がいかに支持されているかが分かる。
もとよりアリババは、ダブルイレブンにとどまらず、巨大市場中国における最大の流通企業。「アリババとどう付き合うか」はもはや、企業の事業戦略における一大論点となっている。