社員の士気が高い会社は変化に強い
職場環境のデータが企業の価値(時価総額)に影響を与えるのは、考えてみれば当然のことです。社員の士気が高い会社と低い会社。この2つが並んでいたとしたら、前者の時価総額が、より伸びやすいのは火を見るよりもあきらかです。
では、なぜ「長期的な」時価総額への影響がありえるのか、あるいは、影響が強くなってきたのか。そこには「社員の士気が高い会社は変化に強い」という構造的な理由があるからです。
ただし、勘違いされそうなので先に述べておくと、私のスタンスは決して「組織戦略が最も重要である」ということではありません。むしろ、全く逆です。
大事なのはあくまで「事業」であると思っています。組織より事業。それが、新刊『OPENNESS 職場の「空気」が結果を決める』が他の組織戦略本と少し違うところです。
当然ですが、企業が存続できるのは、利益が出るからであり、利益は事業がなければ存在しません。そして、事業のベースとは「社会的に意味のあるサービスや製品」が存在することです。どれだけ素晴らしい人たちがいても、誰も求めていないサービスを強引に売っていては、長期の繁栄は難しいでしょう。
ただ、それでも私が職場環境のデータが重要であると述べる理由は、「相対的な重要性が変わってきたこと」を認識しているからです。
「ただの仲良しサークル」ではない組織をつくる
経済成長の多くは人口増減によって説明できると言われますが、現在の私たちは2050年の未来から逆算して、間違いなく「転換点」にいるでしょう。
転換点である理由の1つは、まず、生産年齢人口(生産活動に従事しうる年齢層の人口。日本は15歳以上65歳未満)が減少フェーズに入るからです。人口増から人口減へのシフトは、勝率を変えるゲームチェンジです。10戦して、7勝3敗が普通だったゲームが、10戦して3勝7敗になりえる、ということです。その中で、企業が幸せに成長し続けるためには、「従業員一人ひとりの才能を活性化させる必要がある」と私は確信しています。
しかし、「働きがいのある職場をつくる!」と言うだけなら簡単ですが、実践することは本当に難しい。私自身20代後半から経営の現場にいるからこそ感じますが、「良い職場づくり」には、現場時代の私が想像していたより、数千倍苦労しました。