交通サービスアンケート回答駅リスト(50音順) | |||
会津若松駅 | 青森駅 | 網走駅 | 伊豆急下田駅 |
浦和駅 | 大津駅 | 大宮駅 | 小倉駅 |
鹿児島中央駅 | 川崎駅 | 釧路駅 | 倉敷駅 |
高知駅 | 甲府駅 | 札幌駅 | 三宮駅 |
静岡駅 | 新百合ヶ丘駅 | 仙台駅 | 高岡駅 |
高崎駅 | 高松駅 | 立川駅 | 千葉駅 |
つくば駅 | 徳島駅 | 富山駅 | 新潟駅 |
日光駅 | 八王子駅 | 姫路駅 | 広島駅 |
祝園駅 | 町田駅 | 水戸駅 |
静岡県下田市の伊豆急下田駅からつながる交通サービスの状況を見ると、先の実証実験の下、利用者の事前予約に合わせて運行するオンデマンド乗合タクシーが提供される(1日乗り放題400円)。
乗降場所は観光施設や宿泊施設のほか、県庁や市役所、医療機関など地域住民の利用も考えたものだ。
35駅の中でこうした観光型MaaSに取り組んでいたり、取り組みを考えるべきだろう観光地の駅として、伊豆急下田駅のほかに、北海道網走市の網走駅、北海道釧路市の釧路駅、福島県会津若松市の会津若松駅、栃木県日光市の日光駅、滋賀県大津市の大津駅、香川県高松市の高松駅などがある。
地域の足になるオンデマンド交通
でも地元高齢者はスマホ所有率が低かった
「MaaSはあくまでも手段」と、伊豆での実験を手掛けるジェイアール東日本企画の高橋敦司常務営業本部長は言う。何をなすのか、肝心なのは目的だ。
下田市の場合、観光の活性化が大きな課題であり、マイカーでの来訪が多いために発生する観光シーズンの道路渋滞を解消して公共交通の利用客を増やし、観光客の利便性を向上するために交通サービスに取り組む。
加えて、高齢化と人口減により二次交通の維持が課題となっており、地域の足が必要だ。
実験では地域の課題を解決することも目標にしている。東急の森田創都市交通戦略企画グループ課長によると、フェーズ1を通じて分かったのは、地元の高齢者はスマホ所有率が低いということだ。そこで、フェーズ2ではテレビリモコン操作でもオンデマンド乗合タクシーの予約などができるようにした。
MaaSの実現は民間事業者だけでなく、「行政の本気度」(森田氏)が成否を左右する。
静岡県はこの実験と並行して、下田市の市街地で電気自動車の自動運転の実証実験を12月に行う。ニーズの高い場所をつないで、運転手不足のタクシーやマイカー利用からの転換を図ろうとしている。
MaaSの仕組みを作っても、従来の交通では対応し切れない交通空白地域があれば、それを埋めるものが必要となる。
都市内を移動する公共交通には、路線バス、バス専用道や専用レーンを走るBRT(バス高速輸送システム)、LRT(次世代型路面電車)、路面電車などがあろう。
細かな移動をカバーし、最終目的地までのラストマイルの交通手段になり得るものとしてはコミュニティバス、オンデマンド交通、タクシー、自動運転車両、自転車などが選択肢に挙がる。マイカーに客を乗せるライドシェアは現状、規制の問題がある。
富山市は人口が減少に転じる中で、拡大した都市のコンパクト化を図り、コミュニティバスなどとともにLRTを整備してきた。富山駅北口から発着し、駅北側から沿岸部の観光地などを走る線と、駅南側から商店街、富山城、県庁や市役所などを通る線がある。
駅を挟んで分断されていた南北は、15年に開業した新幹線駅の直下で20年3月に接続する予定だ。
このほかLRT、路面電車は、富山県高岡市の高岡駅、広島市の広島駅、高知市の高知駅、鹿児島市の鹿児島中央駅などでも街を走っている。
つくば市はバス乗降時の顔認証で決済
さらに病院の受け付けや診療費会計も
AI(人工知能)やICT(情報通信技術)などの先端技術を活用し効率的に運用する次世代型都市として、スマートシティを標榜する街の中には街の特色が出た個性的なところもある。
研究機関や研究者が集まり、つくば駅がある茨城県つくば市が実証実験を行う「キャンパスMaaS」では、学内バス乗降時に顔認証によってキャッシュレス決済をする。
「医療MaaS」ではバス乗降時の顔認証により病院の受け付け、診療費会計処理のサービスを統合する仕組みに取り組んでいる。
つくば市のほか、35駅の中でスマートシティ化に取り組むのは、札幌駅のある北海道札幌市、大宮駅のあるさいたま市、新百合ヶ丘駅がある神奈川県川崎市、伊豆急下田駅がある静岡県下田市、新潟駅がある新潟市、祝園(ほうその)駅がある京都府精華町、倉敷駅がある岡山県倉敷市などだ。
今、多くの交通事業者が赤字に陥ったり、運転手の人手不足が深刻化している。これまで車社会であった地方の街でも、運転免許返納により移動手段の確保に不安を感じる高齢者が増えている。
少子高齢化などによって交通サービスが縮小したり、公共交通の利用客数が減少したり、あるいは道路が混雑、渋滞したり、地域個々に課題を抱える。その地域の移動ニーズに合わせて、交通サービスを組み合わせ、拠点となる駅などからつなげる取り組みが必要になる。
交通サービスの一元化で集まった利用客の移動データは、バスなどの発着時刻や路線の再編、街づくり計画などに活用できる。街の実態に合わせて、より便利なサービス提供を生み出すための情報は増えた。
ハードにただ投資するのではなく、目的からのアプローチで技術や情報を取り込み、交通を街の活性化につなげられるか。「未来」につながる駅になるか否かはそこで分かれる。
Key Visual designed by Noriyo Shinoda, Graphic designed by Kaoru Kurata