生物とは何か、生物のシンギュラリティ、動く植物、大きな欠点のある人類の歩き方、遺伝のしくみ、がんは進化する、一気飲みしてはいけない、花粉症はなぜ起きる、iPS細胞とは何か・・・。分子古生物学者である著者が、身近な話題も盛り込んだ講義スタイルで、生物学の最新の知見を親切に、ユーモアたっぷりに、ロマンティックに語る『若い読者に贈る美しい生物学講義』が11月28日に発刊される。

養老孟司氏「面白くてためになる。生物学に興味がある人はまず本書を読んだほうがいいと思います。」、竹内薫氏「めっちゃ面白い! こんな本を高校生の頃に読みたかった!!」、山口周氏「変化の時代、“生き残りの秘訣”は生物から学びましょう。」、佐藤優氏「人間について深く知るための必読書。」と各氏から絶賛されたその内容の一部を紹介します。

忘年会前に覚えておきたい「一気飲み」のリスクPhoto: Adobe Stock

アルコール量の計算方法

 ある先生から聞いた話だが、昔の貧乏な大学生は、お酒を買うことができないので、化学の実験室に忍び込んで、実験用のアルコールを飲むこともあったという(もちろんこういうことをしてはいけない)。しかし、一口にアルコールといっても、いろいろな種類がある。嗜好品としてよく飲まれているアルコールは、その中のエタノールである。

 ところが、実験室でアルコールを飲んだ学生の中には、エタノールと間違えてメタノールを飲んだ者もいて、失明しかけた学生もいたらしい。メタノールは体内で分解されにくいため、毒性が強いのである。

 昔と違って、現在では実験用のアルコールを飲む人は、まずいないだろう。それでも念のため、飲むアルコールがエタノールであることは知っておいた方がよい。

 さて、販売されているビールやお酒などのアルコール飲料には、どのくらいアルコールが含まれているかを示す「度数」が表示されている。アルコールが含まれている割合を示すには、体積で比べる方法と、重量で比べる方法があるが、アルコール度数は体積で比べた値である。具体的には、全体の体積を100としたときに、どのくらいアルコールが含まれているか示した値である。いわゆる「体積パーセント」だ。

 一方、アルコールでどのくらい酔っているかの目安になる血中アルコール濃度(血液の中のアルコール濃度)では、アルコールを重量で表す。したがって、血中アルコール濃度を計算するには、アルコールを体積でなく重量で表さなくてはならない。それでは試しに、血中アルコール濃度を計算してみよう。

 たとえば度数が5度(=5パーセント)の500ミリリットルの缶ビールを、1本飲んだとしよう。エタノールは水よりも軽く、1ミリリットルの重量が約0.79グラム(水は約1グラム)である。したがって、缶ビールに入っているアルコールは、500×0.05×0.79=約20グラムになる。

 次に、体の中の水分の量を計算しよう。求めたいのは血中アルコール濃度だけれど、アルコールは血液だけでなく、体中の水分に溶ける。したがって、飲んだアルコールを体全体の水分で割れば、それが血中アルコール濃度にほぼ等しくなるのである。

 成人の体の水分量は、だいたい体重の3分の2である。もし、あなたの体重が60キログラムなら、体全体の水分量は、だいたい40キログラムになる。そこで、血中アルコール濃度は、20グラム÷(40×1000)グラム=0.0005=0.05パーセントになる。

 この計算からわかるように、体内の水分量が多いほど、血中アルコール濃度は低くなる。したがって、体の大きい人ほど体内の水分量が多いので、アルコールで酔いにくいことになる。

 この血中アルコール濃度が0.4パーセントに達すると、急性アルコール中毒になる危険性がある。500ミリリットルの缶ビールを8缶も飲めば、(単純計算では)その濃度に達するということだ。ただし、以上の計算は、体内でのアルコールの吸収や分解の速度を考慮に入れていない。だから正確ではないけれど、目安としては使えるだろう。