前例のないプロジェクトで一致団結

 そして最大規模のプロジェクトになったのが、2017年4月の「新社屋建設」です。

 空間デザインの小泉誠さん(Koizumi Studio)、グラフィックの水野佳史さん(水野図案室)、建築の広谷純弘さん(アーキヴィジョン広谷スタジオ)、ブランディングディレクションの僕(t.c.k.w)と能作さんで、2014年から月1、2回くらい、本社や東京でミーティングを重ねました。

 小泉さんが後に「会議をやるたびに強度を増していった」と振り返っていましたが、川上の設計段階から自分の専門でない領域でさえ意見を出し合って、連歌の掛け合せのようなプロセスが楽しくてしかたがなかったくらいです。

 普通、この錚々たるメンバーを拘束しようと思ったら、時給換算で結構なことになる。
 だけど僕らはお金ではなくて、能作さんのキャラクターに惚れ込み、前例のないプロジェクトに大きな意味を感じていたのです。

 工場内には、天井から吊り下げられた漢字一字のサインが至るところにあります。

「能作」のすべてを知る<br />伝統技術ディレクター・<br />立川裕大さんの証言

 あのサインも水野さんが、子どもたちがきたときに、
「あれはなんて読むの?」
 とコミュニケーションを誘発するためにつくった仕掛けです。

 建築の打合せ段階からグラフィックデザイナーが参加したからこそ実現した成果の一つですね。

 当時、「能作」の売上は13億円くらいだったと思います。