16万部を突破したデビュー作『転職の思考法』で、「このまま今の会社にいてもいいのか?」というビジネスパーソンのモヤモヤに答えを出し、「転職は悪」という既成概念を打ち破った北野唯我氏。いま、人材マーケット最注目の論客であり、実務家だ。
その北野氏が、今回選んだテーマは、「組織」。発売即、重版が決まった自身初の本格経営書『OPENNESS  職場の「空気」が結果を決める』では「ウチの会社、何かがおかしい?」という誰もが一度は抱いたことがある疑問を科学的、構造的に分析し、鮮やかに答えを出している。
なぜ、あなたの職場は今日も息苦しいのか。具体的に、何をすれば「オープネスが高い」組織がつくれるのか。明日、少しでも楽しく出社するために、一人ひとりができることは何か。本連載では、これらの疑問について、独自の理論とデータから解説する。

「成功例ばかりシェアするリーダー」が危ういワケPhoto: Adobe Stock

 以前の記事では、オープネスを邪魔する「ダブルバインド」「トーション・オブ・ストラテジー(戦略のねじれ)」について紹介してきました。職場の風通しを良くするにはこれらの邪魔を取り除き、具体的な施策を行っていくわけですが、リーダーは、まず何から手をつければいいのでしょうか。

 今すぐ変えるべきなのは次の2点です。

① 失敗が起きたときにどのような解決策をとるのか。自らの失敗を開示できるか
② なぜリーダーをやっているのかを自分の言葉で説明する

 これは多くの人にとって、納得感のある話ではないでしょうか。

 まず1つめの「失敗が起きたときの解決策」は、まさに一般社員がリーダーに求める「有事」のリーダーシップであり、「失敗に対する反応」です。どんな成長企業にも、必ず失敗は存在しています。すべての施策がことごとく成功する、ということはありえません。そこで重要なのは、新しい挑戦を精度の高い戦略をもってやり続けることしかない。そのために、企業文化を体現するトップが、その失敗に対してどういう対応をするのかを見て、従業員は挑戦するか、しないかを決めるのです。

 ある航空会社では「安全に関わる行為で気になることはすべて言ってくれ。もし勘違いだったとしても、ミスを一切とがめない」と経営陣が宣言しているとのこと。
 たとえば「ネジを締め忘れた気がするので飛行機を止めてください」と整備士が報告したとしよう。結果、それが勘違いで飛行機が遅延しても、批難されないのだそうです。

 経営者やリーダーが「自らの失敗をオープンにできるか」は、メンバーの「自己開示性」に強い影響を与えます。どれだけ、経営者やリーダーが口では「失敗を許す」と言っても、メンバーのほとんどは「とはいえ、本当に失敗したら許されないだろう」と思います。当たり前の話ですよね。この問題を最もわかりやすく解決する方法は、リーダー自身の過去の失敗を、メンバーと共有することです。