壁にぶつかり続けた人の強さ
壁にぶつかりながらも、それを克服してきた人の経験は侮れません。文字通りの壁があるとしたら、彼らはそこを登るための工夫をいやというほど繰り返してきたわけです。登るルートの模索。テクニックや体力、道具を有効に使うための技術。自分に不足したそれらの要素を自覚し克服する。ハンデを克服するための努力を、新たな壁が出現するたびに繰り返してきたのです。そのように限界を超えてきた人はやはり強い。何か「分厚さ」を持っています。
プロゲーマーのボンちゃん選手は、実力はトップクラスなのですが、使用キャラクターに恵まれなかった時期がありました。素晴らしい内容の試合をしても勝ち切れない。明らかに実力が劣っている相手にも苦戦させられていました。そんなとき、誰でも「どうせ勝てないのなら」とつい投げやりになってしまいがちです。しかし彼は腐ることなく、試合はもちろん練習でもコツコツやるべきことを積み上げていきました。
少しでも現在の戦力で勝率を上げられないかと、壁との格闘を繰り返していたのです。
彼がようやく納得して使うことのできる強いキャラクターと巡り合ったのは、年単位の時間が流れてからでした。
下がり目の時期にきっちりと実力を身に付ける努力をしていたボンちゃん選手は、そこからは目に見えて成果を出すようになりました。傍から見れば、ただ強いキャラクターに変えただけ、と感じるかもしれません。しかし、普段の練習で接している僕らには、その成果が根拠のあるものだと肌でわかっています。結果が出ない時期の試行錯誤が、いい結果として現れたのです。
勝てない、成果が出ない時期には僕も落ち込みます。しかしそんなときこそ、大切な種を蒔くタイミングなのだと思うようになりました。僕自身、再び壁にぶつかって勝てなくなる時期が必ずあるに違いありません。でも焦って成果を追えば、自分を見失うことになります。逆に力をつける時期として向き合うことができれば、プラスになる。どちらにするのかは自分次第です。